最終話 オオカミは、愛する人と…
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は、力を振り絞って耐える。だが……、次の瞬間、自身の横を、光となったかずみ達が通り過ぎていった。
そして、ヒュアデスの暁が、白い光に包まれるように消滅した。
「ぁああ……、うぅ! カズ…カズぅ…。」
近場のビルの屋上に落ちたカンナが、泣きながらカズの名を呼んだ。
『カズは…、君のオオカミは死んだ。もういない。』
キュゥべえがカンナの近くでそう言った。
「カンナ…。」
かずみ達が駆け寄る。
カンナは、泣きながら、自身のソウルジェムを取りだし、握りつぶそうとした。
その時だった。
『ダ、メだ…。』
キュゥべえが黒い何かに潰された。
「…カズ?」
弱々しいが、確かにその声だった。カンナが横を見ると、そこには、ドス黒いの肉の塊がいた。
かずみ達が思わず引くほど凄まじい姿であったが、それは、カズだった。
『カンナ…、い、き、ろ…。』
ボロボロの腐りかけの肉が付いたような骨の手が、カンナのソウルジェムに触れた。
すると、カンナのソウルジェムから濁りが消えた。
「だめぇ!! それをしたら、カズが!」
『うぐ…ぅう…。』
ソウルジェムの濁りを受け止め、カズが苦痛の呻きをあげた。
『カンナ…。言いたいこと…あ、る…。』
「なに!? 何でも言って!」
『…きだ…。』
「えっ?」
『好きだ…、カンナ…。』
「カズ…、あんた…。」
『短い間…だったけど…、名前をくれ、て…、オレに居場所を…く、れ、た…。でも、オレ、オオカミ、だか、ら…。』
「……馬鹿だね。」
カンナは、呆れたように笑い、涙を零し続けながら、肉塊となっているカズを抱きしめ、口らしき場所に自身の唇を押し当てた。
「これが…、私の気持ちだよ。分かった?」
『…カンナ……。あ、りがと、う…。』
カズの体がやがて、オオカミの魔獣に近いモノへと変わり始めた。だが、毛皮はずる剥けており、痛々しい姿で、身体のあちこちが泡立つようにブクブクとしている。
すると、空間が歪んだ。
「カズお兄ちゃん? カンナ!」
『さよ、な、ラ…だ。』
『待ってくれ。君達は、償うべきだ。宇宙の寿命を僅かでも削ったことに対して。』
『インキュベーター…。もし、オレ達…に手を出すなら…、この宇宙と引き換えだ。』
『!?』
『オレ達は、オレの世界(結界)の中に完全に閉じる。お前にも干渉できない、絶対的空間だ。もしこじ開ければ…、オレが、宇宙の因果律に浸食するがん細胞のごとく宇宙を喰らい尽くすだろう。オレのコネクトで、宇宙の因果律にそう書き換えた。』
『馬鹿な…。神ですらない、魔獣がそこまでのことを…。』
「フェンリール…、神殺しのオオカミ…。」
海香が
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