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ヒュアデスの銀狼
SS11  ヒュアデスのフェンリール(銀狼)
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オルの強烈な蹴りが入り、そこにカズミの破戒の魔法が降り注ぐ。
 カズは、苦悶の悲鳴を上げ、倒れ込んだ。
『う…ぐ…ぁ…あぁ…。』
「今…楽に…!」
 かずみがトドメの一撃を与えようと杖の先に破戒の魔法を溜めた。

 その時。
 かずみが、限界を迎え、へたり込んだ。
 そして、カズは、内蔵や溶けた部分をボタボタと落としながら、無理矢理に立ち上がった。
 体が、徐々に再生していく。
『このままじゃ、君らの国で言う、いたちごっこだね。』
 キュゥべえがかずみに近づいた。
『かずみ、君に選択肢がある。』
「かずみに近寄るな!」
『そんなことを言ってる場合じゃないと思うけど。まあいいや、君は、この中で唯一僕と契約をしていないんだ。つまり…。』
 それを聞いたかずみは、ハッとした。
『願いの内容はともかく、今の君では、オオカミの魔獣を殺しきれない。さあ、どうする?』
「ダメだ、かずみ!」
 海香とカオルが止めようとする。
 だがかずみは、意を決したように表情を改め、胸に手を置いた。

「私を人間にして。」

『けれど、それだと結局は抜け殻になるだけだ。それでもいいのかい?』
「私は、誰の魔法も力も借りず…、自分の足で明日を踏み出すための体が欲しいの! だから……。」
 かずみの体が光に包まれ始める。
「さあ、叶えてよ! インキュベーター!!」
 そして…、かずみの姿が変わった。
 髪が伸び、そして魔法少女としての姿が変わる。
『君の願いは、エントロピーを越えた。さあ、その新しい力を解き放ってごらん。かずみ・マギカ(魔法少女かずみ)。』
 白に近い、薄紫色のドレスは、彼女の絶望に抗う強すぎる希望そのものか…。
『すごい力を感じる。この魔法少女はアタリだ…。』
 すると、カオルと海香の変身姿も変わった。
『かずみの魔法力に影響されて、君達もバージョンアップしたんだ。』
「やれる! これなら、勝てる!!」
『かずみ…。それがお前の出した答えなんだな。』
「カズ…。」
 新しくなった杖を手に、かずみが魔法を溜め始めた。
 その頃には、傷が完全に癒えたカズは、かずみに襲いかかった。
 振り下ろした前足の爪を杖で前足ごと弾き飛ばし、跳ぶ、そして振り下ろした杖で、カズの顔を切り裂いた。
『これ…ほどとは…。』
「トドメだ!!」
「合体魔法!」

 メテオーラ・フィナーレ

 三人が同時に発動したその魔法は、まっすぐオオカミの魔獣…カズの体を貫き、爆散させた。

「肉片も血もすべて消さないと!」
 海香がそう叫んだ。
 周りには、プスプスと焦げ、けれど、まだ生きている肉片が落ちていた。

『か…ん
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