201部分:さくらんぼの二重唱その十九
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面に向ける。こうして一旦未晴から顔を離したうえで話すのだった。その動作は心なしか照れ隠しのように見えた。
「だからな」
「じゃあ私のお家まで?」
「どっちでもいいさ」
彼はまたこう言った。
「俺はな」
「だったら」
未晴は彼のその言葉を聞いて顔を少し俯けさせた。そのうえで考えるのだった。
少し経ってから顔を彼に向けてあげた。そして言った。
「今は」
「今は?」
「いいわ」
今はいいと言うのだった。
「今度。御願い」
「今度かよ」
「今日はそんなに遅くないしまだね」
ついついまだと言ってしまった未晴だった。
「そこまでは。図々しいから」
「図々しいのは嫌じゃないさ」
正道はまた言った。
「別にな」
「それでもいいわ」
未晴はまた俯いて述べた。
「今日はね」
「だったらな」
「ええ」
危険かどうかは今はあえて無視していた。そこまで危なくはないと思っていたこともあるが他の理由が最も大きかった。しかしそれも言わないのだった。
「じゃあ二人でね」
「帰るか」
こうして夜にはじめて二人で歩くのだった。芝居の用意の後で静かに夜を歩く。二人の絆は少しずつだが確実にその仲を進展させていくのだった。
さくらんぼの二重唱 完
2009・2・22
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