士郎くんは一人のために、士郎くんは皆のために
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つけておけ。同志の証だ」
薄く笑みを浮かべながらそう言うと、兵士達は照れ笑いを浮かべて仲間達に赤布を配り始める。
バンダナとして額に巻いた聖骸布を外し、自分も汗を流す。そろそろ臭くなってきた頃だと自覚はしていた。裸になって体を洗い、髪の汚れを落とす。それから再び服を着ると手早く飯を食い、外していた眼帯と聖骸布を装着する。
皆が思い思いに河で体を洗ったりしている。上流の方に行き、水筒に水を入れたりするのも忘れていない。
「出発するぞ」
一時間の休憩を終えると、再び進発する。
「次に落ち着ける場所があれば、そこで今日の行軍は終わりとする。隣り合った者と助け合いながら歩け」
兵士達は赤い布を腕に、頭に、或いは首に掛けていたりした。同じものを身に付ける事で、仲間意識が深まっているのだろう。特に、若者ばかりの軍だ。そうした心理に影響され易い。
黒馬に跨がる士郎の視線は高い。士郎は慎重に彼女の体を調べ、魔術的な同調に努めていた。何せ全力で走れば自動車並みの速度を出せる士郎の方が速いのだ。馬に乗ってもメリットが視線の高さだけというのは些か物足りない。
彼女に強化の魔術を掛けられたら、それこそ疾風のように走ってくれると期待できる。といっても自分にならいざ知らず、自分以外の生物に強化の魔術を掛けるのは至難の業だ。士郎の魔術の技量だとかなり厳しい。
故に裏技として霊的パスを繋げようと試みている。それが繋がれば、強化魔術の難度は格段に下がるのだ。何時間もずっと一人、四苦八苦しながら模索していると、漸く黒馬とパスを繋げられた。
「……遠坂に見られたら、『三時間も手こずるとか相変わらずのへっぽこね』とか言われそうだ」
相変わらずの技量に士郎は落ち込んだ。気を取り直して黒馬が嫌がらないように、そっと魔力を流す。びくんと体を跳ねさせた彼女を宥めるように首を撫でてやり、針の穴に糸を通すように慎重に魔術を掛けた。
成功、は――した。軽く腹を蹴って走らせてみる。と、瞬間的に士郎は振り落とされた。
稲妻のように走った黒馬の速度に面食らってしまったのだ。思わず笑ってしまう。一人黒馬の背に取り残された沖田が「ひゃぁあああ!? マスターのばかぁぁぁ――」と残響を残して彼方に走り去ってしまう。士郎は声をあげて笑った。落馬の際にもきっちり受け身は取っていたから怪我はない。
「まぁすぅたぁ?」
「ははははは! いや、すまんすまん。予想してたよりずっと速くてな」
「すまんじゃありませんよ!? 私まで振り落とされて、この仔が止まるまでずっと追い掛けて、それから乗ってここまで帰ってきたんですからねコフッ?!」
「怒鳴るか吐血するかどっちかにしろよ」
口から血を吐いて黒馬に寄り掛かった沖田に苦笑する。黒馬が士郎に顔を寄
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