士郎くんは一人のために、士郎くんは皆のために
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する。
チャーリーは手足が冷たく、湿っており。顔は青く、目がうつろ。表情もぼんやりとしている。腰に括りつけていた水筒を開けて自身の手を清潔に洗い、手袋を嵌めながらイーサンを呼んだ。
「イーサン! お前のツレが死にかけている、処置してやるから早く来い!」
慌てて馬車の中に飛び込んできたイーサンに、ビニールの手袋を嵌めさせ、ガーゼでチャーリーの左上腕部の深い傷を押さえさせた。
「心臓より高い位置に上げておけ」
それだけ言って、士郎は彼の右の大腿部にある裂傷に水をかけ、出来るだけ綺麗にしてから縫合を始めた。
麻酔なんてない。苦痛に歪むチャーリーの顔。しかし意識がないのは幸いだった。ものの一分で傷口を塞ぐとガーゼを貼り付け、包帯を巻く。次に骨折しているらしい左脚にタオルを巻き付けて添え木をし、止血などを終える。
「……血を流し過ぎだな」
ぽつりと溢し、折角泣き止んだのにまた泣き出しそうなイーサンを横目に、チャーリーの脈を再度図る。脈が弱い。不意に、彼の呼吸が止まったのに気づく。
気道を確保し、人工呼吸で酸素を吹き込み、心臓マッサージをする。その繰り返しでチャーリーは辛うじて息を吹き返した。士郎はアゾット剣を投影する。その剣は遠坂凛のものではなく、ギルガメッシュの王の財宝に秘められていたものだ。つまり錬金術師パラケルススの魔剣である。
厳密にはそれそのものではない。しかし似たような効果はある。パラケルススの魔剣の柄頭の玉には癒しの力がある……気休めにはなるだろう。それをチャーリーに包帯で括りつける。
「イーサン」
「あ、ああ……」
「コイツをずっと見ていてやれ。もう俺にやれる事はない。容態が変化したらすぐに声をかけろ」
三頭の馬が牽く、それなりに大きな馬車の御台に座り馬に鞭をやって走らせる。自身の率いていた群衆の許に向かうと、そこで士郎は一兵卒のヘルマンに声をかけた。
「ヘルマン、誰か馬車を操れる奴を知らないか」
「は……自分は知りません」
「そうか……春、カーターを呼べ」
「はい」
ワープしたように瞬間移動する沖田を見て、縮地は便利だな、俺も出来るようになりたいと士郎は思うも、無理なのは分かっていた。自分にその才能はないと弁えている。
カーターが駆け寄ってくる。彼にも訊くが、やはりそう都合よく馬術や馬車の操術を修めている者はいなかった。カーターを除き。士郎は馬術をエーデルフェルト家で学ばされたから、辛うじて乗れる程度であるし、馬車の手綱捌きも拙い。
「カーター、女と子供達の中で、特に体力のない者を選んで馬車に乗せろ」
「了解しました」
「それとな、三頭の馬で馬車を牽いていたが、二頭だと何人まで乗せて走れる?」
「およそ七名かと。それでも、最大速度は落ちます
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