摩耗を抑えて沖田さん!
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感じた。足音。そう判じた瞬間に意識が覚醒する。咄嗟の事態で武器を投影するのでは遅い。反射的に懐に手を伸ばして投げナイフを抜こうとして……気づいた。
森の向こう側から、難民の子らしき少年がやって来ている。一丁前に気配を殺しているつもりなのか、樹木の陰からこちらを覗いていた。
「……」
きゅ、と唇を引き結び。沖田はそっと、気づかれないように刀の鯉口を切ろうとしていたのを隠す。……過敏になり過ぎているな、俺も沖田も。
――よりにもよって今、来なくても……。
俺が眠っていたのは僅かに44分だけだった。沖田が何か物言いたげに……複雑そうに表情を動かしたのを横目に、俺は少年へ笑みを見せる。
彼を手招きした。生き延びてくれた幼い命だ。邪険にはしない。『例え食糧を盗みに来たのだとしても』。少年は警戒しつつも、ゆっくりと木の陰から出て来る。
俺が怖いんだろうな、何せ見知らぬ他人。しかも隠れていたはずなのに気づかれたと来た。後ろめたいものがあるから、尚更怖い。しかも逃げ場はないと来てる。
白い肌と碧い眼。癖の強い金髪の少年である。
「どうした、少年。腹でも減ったか」
「……」
「黙っていたら分からないぞ」
こくりと頷いた少年は――我慢強そうな、気の強さを感じさせる目をしていた。なるほどと納得する。そういう事かと。
戦闘背嚢をたぐり寄せ、そこから魚の干物を出す。沖田は咎めるべきか悩んだようだが、言っても無駄かと困り気味だった。元々子供好きでも、今はマスターを優先しないといけないと思ってくれているようだが……。
俺は干物を一匹分貪り食う。そうしながら戦闘背嚢を少年に投げた。慌てて受け止めた少年は、その背嚢の重さによろめき驚いて目を見開く。
「其処に隠れているのは兄弟か? 友達か? なんでもいいが、皆で分けろよ」
「……おじさん……」
「お兄さんだクソガキ」
「おじさん、ありがとう……」
お兄さんだって言ってんだろ……。
少年が背嚢を担いで行くと、木の向こう側で小さな歓声が上がった。少年とは別の、更に二人の少女が顔を出して、兄らしい少年と一緒に頭を下げて駆け去っていく。
お兄さん……。
「何落ち込んでんですかっ」
「だってあのチビジャリども……三十路いってない俺のことおじさん呼ばわりしやがった……」
「だってじゃありませんよ! それより大事な食べ物全部あげちゃってよかったんですか? それにあの子……盗りに来てましたよ」
暗に罰を与えなくてもいいのかと訊ねてくる沖田に肩を竦める。子供は好きでも、叱るべき所は叱る筋が沖田にもあるらしい。
「育ち盛りなんだろ。それに、妹二人の為に食いモンをとって来ようなんざ見上げた心意気だ」
「罰がなかったら、また同じ事しますよ
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