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fate/vacant zero
誇りの在り処
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「なあ、サイト。本当にきみ、残らないでいいのか?」


 隣、蝋燭の燭台を持ったギーシュが、何度目だかの確認をしてくる。



「お前もいい加減しつこいなぁ……、いーんだよ。王子さまの依頼が先着だ」


 今は、ぐっすりと眠るタバサをお姫さま抱っこしながら、割り当てられた客室へと真っ暗な廊下を移動している最中だ。

 ……タバサって無茶苦茶軽いんだな。見た目以上だ。



「だいたい今の俺には、あいつを守ってやれるだけの知恵も知識も力もねえ。
 俺がそれだけの力を身につけるまでは、誰かあいつを護れる奴があいつには必要なんだ。
 それを買って出てくれるっていうんなら、今は任せるさ」


「そんなこと言ってる間に、お払い箱にされなけりゃいいんだがね」

「うるせえ」


 ちょっと自分でも思ったから言うんじゃねえよ。

 タバサぐらい強くなれたら、もう一辺決闘してやろうか。



「それは勘弁願いたいね……。

 おや? キュルケはどこかね?」

「へ?」


 くるりと後ろを振り返ってみた。



 ……いねえなぁ。真っ暗だ。



「まあいいや。部屋の位置は伝えたから、迷ったりはしねえだろ。
 タバサを寝かすのが先だ先」

「いいのかねぇ」


 気にすることなく、俺たちは部屋へ向かった。

 明日は早いしな。







「ところで堂々としてるから気にしなかったんだが、恥ずかしくないのかいその抱え方?」

「お前がいうな」


 ええ格好しいのレベルなら間違いなくお前が上だろが。







 キュルケは、廊下の途中、分かれ道になっているところで一団から離れていた。

 ここを通りかかった時、たまたま視線をやったバルコニーに誰かが佇んでいるのを見つけたからだ。


 キュルケは迷わず前を行く才人たちと別れ、そちらへ向かった。


 はたして、それはルイズであった。

 長いブロンドを風になびかせ、見上げる月からの光を弾きながら、涙を空へと落としている。


 ……なんで泣いてるのかしらね?



 不思議に思いながらガラス張りの扉を押し開くと、こちらに気付いたルイズが、ついと振り向いた。

 涙を拭うのも忘れて、こっちを呆然と見つめてくる辺り、どうも様子がおかしい。



「あなたらしくないわね、ヴァリエール。
 明日には花嫁になるっていうのに、何でそんなに哀しそうなの?」


 瞬間、ルイズの顔がふにゃりと崩れた。

 おまけに、あろうことかあたしの胸に飛び込んで、ぐりぐりと顔を押し付けてきた。

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