誇りの在り処
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たちだったが。
ウェールズが依頼を伝え貴族たちの輪に戻った途端、タバサがフネを漕ぎはじめてしまった。
まあ、無理もない話だ。
タバサは昨夜、一度精神力を使い果たしているのである。
一晩でそう易々と回復する量ではないのに、ラインスペルとはいえ今日も今日とて凧フネの上で魔法の乱れ撃ちである。
今までぶっ倒れなかったのが不思議なほどに、タバサは疲弊ひへいしていた。
仕方ないので、才人はその辺りをうろついていた給仕に寝室の場所を訊ねている。
キュルケは、ふらつくタバサに肩を貸して支えている。
こういう場合はおんぶかお姫さま抱っこがセオリーではなかろうか。
ギーシュが多少焼けそうな胸を抑えながらそんなことを考えていると、突然肩に手を置かれた。
「も、もう酒は勘弁してください」
「何を言っているんだ? きみは」
「え?」
くるりと振り返ると、そこにはワルド子爵が佇んで、こちらを見つめていた。
「まあいい。きみたちに言っておかなければならないことがある」
「なんでしょうか」
「明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる」
言葉に詰まった。
いきなり何を言い出すのかね、この人は。
何と言っていいか悩んでいると、キュルケが声をあげた。
「……えらく急ですわね。こんな戦場で結婚式を?」
「僕たちの婚姻の媒酌を、是非ともあの勇敢なウェールズ皇太子にお願いしたくなってね。
皇太子も、快く引き受けてくれた。決戦の前に、僕たちは式を挙げる」
目の端、サイトが固まるのが見えた。
無理もないかね。
しかし、急にも限度っていうものはある。
「きみたちも出席するかね?」
「いえ、ぼくたちは「出席しますわ」ので、ってキュルケ?」
怪訝な視線を向ける。
「きみ、皇太子からの依頼はどうするんだ?」
「あら、宿敵の結婚式なのよ?
あたしが見に行かないわけがないじゃないの」
そうさらりとのたまうキュルケ。
まあ、それもそう……なのかね?
「ふむ。では、キュルケ以外は不参加かね?」
「あ、はい。皇太子からの依頼がありますので……」
「では、きみたちとはここで一度お別れだな。
私たちは、獅鷲グリフォンで帰るよ」
「そうですか」
なんとなくサイトの様子が気になり、横目を向けてみる。
サイトは、熟睡し始めたタバサをキュルケから受け取り、横抱きにしていた。
その表情はいつも通りのようで、それでいてどこか硬かった。
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