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fate/vacant zero
誇りの在り処
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まからの手紙を読んでも、それでも行くんですか?」


 ちょっと支離滅裂になったが、王子さまに言いたいことは伝わった。と思いたい。


 お姫さまからのあの手紙。

 王子さまの、それを見たときの表情と、不自然な間。

 そして旅立つ前日、お姫さまの漏らした一言。


 なら、あの手紙は。

 今回の、旅の目的は――



 王子さまが、軽く苦笑して口を開いた。



「参ったな、きみにも見抜かれてしまっていたか。

 ……答えは、是YESだ」



 ――お姫さまから王子さまへの、恋文ラブレターの回収。



「守りたいがために、知らぬ振りをせねばならぬ時がある。
 ――愛するが故に、身を引かねばならぬときがあるのだ」



「……でも。……それでも……」


 言葉が、上手く出てこない。視界が滲んできた。



「私がトリステインへと逃げ出してしまっては、奴らは勢いをそのままに、トリステインまで攻め込んでしまうだろう。
 無防備なトリステインへと。

 私は無辜の民を、それも他国の民を己が身勝手で死なせてしまうほど、愚かになりたくはない」



 王子さまには、愛する人がいる。

 その愛する人も、王子さまを愛している。


 でも。


 王子さまには、その人の為に生き残ることも許されないんだろうか。


 彼らの不幸の上に、見ず知らずの人の平和が。

 幸せが、遺される。


 そんな平和を、人々は……望むんだろうか。



 望んで、しまうんだろうか?



「いま言ったことは、アンリエッタには秘密にしておいてくれ。
 いらぬ心労は美貌を損ねるからな。

 ただ、こう伝えてくれればいい。
 『ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んでいった』と」


 そう言ってレモン酒を一呷あおりした王子さまは、改めて俺の方を向き直った。



「さて、ここからは頼みごと……、というよりも、きみたちにちょっとした依頼があるんだ。受けてくれるかい?」


 潤んだ視界のまま、俺は大きく頷いた。

 今は、この死に征く王子さまの頼みごとなら、なんでも叶えてあげたい。そんな気分だった。


 ……って、きみたち・・?

 それってつまり、と王子さまの視線の先――俺の背後、というか隣というか、とにかく頭を160度ぐらい反転させて振り向いた。


 そこには、タバサが、キュルケが、ギーシュが居並んでこれまた大きく頷いていた。



 お前ら、立ち聞きは良くないことだって知ってるか?









 さて、ウェールズからの依頼を受けた才人
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