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fate/vacant zero
誇りの在り処
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ん脱線してた。


「死ぬのは、怖くないんですか?」


「そりゃあ怖いさ。死ぬのが怖くない人間がいたら、是非会ってみたいものだ。
 どうすれば怖くなくなるのか、その秘訣を訊いてみたいね」



「なら、どうして?」


「守るべきものがある。
 守りたいものが、そこにいるからだ。
 その重みこそが、一時ながらも死の恐怖を忘れさせてくれる」


 少し、どきりとした。


「……俺には、分かりませんよ」

「そうかい? 私は、きみは既にそれを理解していると思ったのだが」



 ……そうかもしれない。


 例えば四日前、ルイズを助けるため、ゴーレムの足の下へ滑り込んだ時。


 例えば昨日の夜、俺が二人を庇った時。


 自覚無しに体だけが動いた理由は、正にそれではなかっただろうか?



「なぜです?」

「目を見ればわかるさ」


 王子さまはそう言うと、遠くを見るような目で語り始めた。



「我々の敵である貴族派、『聖邦復興連盟レコン・キスタ』の目的を、きみは知っているかい?」


 首を横にふる。

 名前すら初耳です。



「かの大陸ハルケギニアの統一さ。
 その為に、『聖域』を取り戻すという理想おだいもくまで持ち出してな」


 ……えーと。



「要するに世界征服、ってことですか?」

「多少語弊はありそうだが、そんなようなものだろうね。
 私も、別にそんな理想を掲げること自体に文句は無い」


 じゃあ、どうして?



「あやつらは、連盟レコン・キスタは、そのために流される民草の血のことを考えぬ。
 荒廃を辿るであろう、国土のことを考えぬ。
 理想ばかりを見据え、己が何の上に立っているかを考えぬのだ」


「その為に、あなたたちは命を捨てるんですか?」

「その通り。少なくとも、私と父はそうなのだ。

 民を思い、民に尽つくす。
 それが、民に生かされる王家に生まれたものの宿星なのだ。

 此度のことも、内憂を払えぬ王族に、最後に課せられた義務なのだよ」



 ……わからない。


 それでは、まるで。

 王族が、奴隷のようではないか?

 王族とは、自分の幸せを願ってはいけないものなのか?


 なんだか、自分の中でいつの間にやら築かれていた"王族"への価値観が、がらがらと崩れていく。

 ――そんな崩れていくイメージの欠片の中に、あの夜のお姫さまの、悲しげで、それでいて朱く染まった貌があった。



 あれは、そういうことなのか?



「……俺にはわかりません。
 でも王子さまは……、あのお姫さ
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