白き空の国から
[8/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
分で打ち止めだよ。あの凧フネに大人しく従うんだな」
ワルドはこともなげに言うが、つまるところそれは積荷の全てを受け渡すということだ。
これで破産か、と口の中だけで呟いて、全凧せん伝声管の蓋ふたを開いた。
「裏帆を打て。停凧ていせんだ」
キュルケがルイズに支えられながら甲板に上がってきたとき、丁度その声は横殴りに飛んできた。
「空賊だ! 抵抗するな!」
見れば、黒凧はもはや数メイルの距離にまで接近していた。
あちらの凧フネの舷側には、拡声具メガホンを手にした男を中央に、弓や火打銃マスケットを構えた男たちがずらりと並んでいる。
「本当に空賊とはねぇ……」
空賊たちは鉤かぎのついたロープをこちらの帆柱や舷縁に渡すと、それを伝ってこちら側へと飛び移ってやってくる。
その屈強な男どもの数、およそ数十人。
各々の手には斧やら曲刀やらの得物がしっかりと握られている。
それに驚いたのか、前甲板に繋がれていたワルドの獅鷲グリフォンがグォオンと威嚇をしたのだが、次の瞬間にはその頭の周りは青白い雲に覆われた。
どすんと獅鷲グリフォンは甲板に崩れ落ちる。
「『眠りの雲スリープクラウド』か……、どうやら向こうにも魔法使いメイジがいるようだな。
懐から手を抜いておいた方がいい。その怪我ではどのみち自殺行為だ」
いつの間にか背後に現れていたワルドが、キュルケに声を掛けてきた。
「……そうみたいね」
懐、手持ちの短い杖にかけていた手を外に晒し、呟きを返す。
ルイズに片腕と体重を預けながらキュルケが視線を向ける先、どすんとこちらの凧フネに降り立つ空賊たち。
そんな中、一人のやたら目立つ姿をした男がいた。
黒ずんだ詰め襟えりのシャツの胸をはだけ、よく焼けた逞たくましい胸を覗のぞかせている。
左手の指には、氷をそのまま固めたような無色の宝石がはまった指輪をつけている。
ぼさぼさの長い黒髪は赤いバンダナで乱暴に纏められ、顔の下半分は完全に無精ひげで覆われ、左目は眼帯で隠されている。
「船長はどこでえ」
荒っぽい仕草で低くよく通る声を放つその男が、この空賊たちの頭かしららしかった。
「わたしだが」
震えながら、だがしっかりと地面を踏みしめ、靴の中で指を強く握り、船長が手を上げる。
頭かしらは大股で船長に近づくと、曲刀をおもむろに抜き放った。
びくりと震えた船長の顔を、その腹でぴたぴたと叩く。
「凧名せんめいと、積荷を言いな」
「……トリステイ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ