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fate/vacant zero
白き空の国から
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ヴァリエール」



「寒くないの?」



 はぇ? と体を見下ろしてみた。


 ……左肩と胸を覆う包帯。そして肌色が見える。

 スカートは?


 腰に手をやって触れてみた。

 ……この手触りはいつものシルク。



「……もうちょっと早く言ってほしかったわ」


「そう?」

「ええ。それで、あたしの服は?」


「椅子に掛かってるわよ」


 なんかあたし、ショーツと包帯しか身につけてなかったみたい。

 意外と寒くないものね?









「右舷上方、雲中より凧フネが接近してきます!」


 鐘楼しょうろうの見張りの声が、凧フネ中にこだまする。

 甲板後方にて、ワルドと並んで操船の指揮を取っていた船長にもその声は届き、見張りの指し示す方向を見上げさせた。


 まだ多少の距離はあるが、その黒くタールが塗られた船体は、戦う艦ふねを思わせる威容を持っていた。

 旋回を始めたその船体の、こちらに向けられつつある舷側には、二十云門ほどの砲門がずらりと黒光りしている。



「貴族派レコン・キスタの凧フネか?
 お前たちに荷を運んできた凧フネだと、早く教えてやれ」


 船長が伝声管に喋り、見張り員は船長の指示通り、手旗で信号を送った。


 のだが。

 黒い凧フネからは、なんの反応も返ってこない。


 その時、『遠視の筒』でその凧フネを見ていた副長の声が、伝声管から大きく響いた。



「船長! あの凧フネは旗を掲げておりません!」


 さっ、と船長が青褪めた。



「空賊か?」

「混乱に乗じて、活動が活発化していると聞き及びますゆえ、おそらく間違いないかと!」


「いかん、逃げろ! 取舵いっぱい!」


 船長のこの判断は、結論から言うとあまりに遅すぎた。

 黒凧フネは既に併走をはじめており、大砲おおづつ一門をこちらの進行方向へと撃ち放ったのだ。


 停戦しろ。さもなくば……。


 そんな意味合いのこめられた砲弾は、ぼごん!と鈍い音を響かせて雲を打ち抜き、海に小さく水柱を上げた。

 黒凧フネのマストに、四色の旗がするすると登っていく。


 信号だ。



「停凧ていせん命令です……、船長」


 選択肢は二つ。

 戦うか、奪われるかである。


 とは言ったものの、この凧フネの武装は移動式の大砲おおづつが三門。

 二十云門も片舷側に砲門を並べたあの凧フネとは、比べるまでもなかった。


 助けを求めるように隣のワルドに視線をやる。



「魔法は、高さを稼いだ
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