違和感の交錯
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本体は取り逃しちまったらしい。
さっきの覆面ヤロウは、こんなんに化わっちまったぜ」
そう言ったシェルンノスの手の上には、その体に使ったものと寸分違わぬ――
木彫り人形が、あった。
さて、場面を戻そう。
キュルケは傷の痛みに耐えながら、フーケがどこから攻撃をしてきているのかを探っていた。
先ほどから、ギーシュは『戦乙女ワルキューレ』を三体に増やして、飛来する岩をその槍で叩き落としている。
それらの攻撃は、全てがギーシュの死角から行われているのだ。
突然居なくなったり、音も無く背後に移動したり、姿もなく声だけが響いてきたりするような魔法。
そして、相手は『土塊』のフーケだ。
『土』属性の魔法である可能性は高いだろう。
それらを踏まえると、一つの魔法に思い至った。
『遁行グランドダイブ』の魔法。
以前、ミセス・シュヴルーズの授業で教わった、地中を泳ぐように進むことの出来る魔法だ。
たしか、実用性に関して、何か注意するべきことがあったような気がするのだが――
……なんだっただろうか。
「……ねえ、ヴァリエール」
傷口の手前をハンカチでキツく縛ってくれている"宿敵"に、小さな声で尋ねる。
「何よ。っていうか喋るんじゃないわよ!」
そういうわけにもいかないので、後半は無視して再度尋ねる。
「あなた、『遁行グランドダイブ』の欠点って、なんだったか覚えてない?
覚えてたら、小声でお願いするわ」
怪訝な顔をした"宿敵"が、耳元でぼそぼそと囁き。
そうして作戦は決定した。
その足元の地中深度約3メイル、歯噛みをしているフーケの姿がそこにあった。地上からは見えないが。
(あの新顔の坊や、なかなか粘るじゃないか…、マズイわね)
フーケの精神力は、『巨大岩人形ゴーレム』、『遁行グランドダイブ』とトライアングルスペル二つに加え、攻撃用の『石矢ストーンエッジ』の多用により、既に底が見え始めている。
早くケリをつけて『遁行グランドダイブ』を解かなければ、地中で意識を失ってしまうだろう。
それだけは避けなければいけなかった。
まだまだ、こんなところで死ぬわけにはいかないのだから。
(そろそろ息苦しくなってきたし、次の潜行中にケリをつけましょうかね)
『遁行グランドダイブ』は、地続きである限りはどんな場所であろうと移動できる便利な移動手段であり、同時にまたとない奇襲の手段であった。
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