いつかの面影
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た奴でもいるんだろうか?
好奇心に駆られ、そっと扉の陰から外を覗き見る。
そこで俺は、思わず言葉を失ってしまうほど、一枚の絵画のようなその風景に見惚れた。
遠く地平線近くに浮かぶ、青と赤の細い月。
よく晴れた、暗く眩い空。
こっちには電灯も何も無いから、星も全天が天の川といわんばかりにちかちか瞬またたきまくっている。
そして、その幻想的な夜空に溶け込むように、ランタン片手に佇んでいる小柄な影が一つ。
マントの下に制服らしきブラウスとスカートを着て、下縁の眼鏡を掛けたその横顔は――
「タバサ?」
す、と全体的に小振りな体をこちらへと振り向かせた影は、紛れもなくタバサだ。
光源がランタンだけだから髪や瞳の色はさっぱり分からないが、整った顔立ちや見慣れつつある短い髪、控えめな背丈はどう見てもタバサでしかなかった。
声に出してしまっていたのか、こっちに気付いたタバサはてくてくと歩いてきて、俺の目の前で立ち止まった。
どうでもいいが、顔の下辺りでランタン持つのはやめた方がいいぞ。驚かれるから。
「どうしてここに?」
いつもより少しばかり感情の感じられる、笛の音みたいな涼やかな声が耳朶を打つ。
いや、そりゃ俺の台詞なんだが。
……まあ、レディーファーストってことにしとくか。
「ああ、その、なんだ。……今日の昼、お姫さまが学院に来たの覚えてるか?」
タバサがこくりと頷く。まあ、当たり前か。
「なんかそのお姫さま、ルイズの幼馴染みたいでさ。
急に部屋を訪ねてきたもんだから、ちょっと気を利かせて出てきたんだよ」
「……そう」
なんだかよくわからない間が一瞬空いたが、ともかくタバサは納得した、ような気がする。
下から照らすランタンしか灯りはないから、もともと無表情気味なタバサでは声色で判断するしかない。
ま、納得したっていうんなら、今度は俺の質問する番だろう。
「そういうタバサは、こんなとこで何やってたんだ?」
こんな夜中に、ランプ一つだけ持って。何も持ってない俺が言えた義理じゃねえけど。
そう尋ねられたタバサは少し考えるようにしてから、短く口を開いた。
「お祈り」
お祈りか。
また斜め上に予想外なかわいらしい答えがあったもんだ。
「お祈りって、何を?」
と、気付いた時には止める間もなく、好奇心が口を動かしていた。
こう言っちゃなんだが、タバサが祈る必要があるようなことってそう思い浮かばないんだが。
「母さまの健康
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