いつかの面影
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イズはぱちくりと瞬いて、ドアを見つめた。
才人が部屋から出て行ったことに気付かなかったらしい。
しばらくドアを見つめてから、がっくりと肩を落とした。
なんだってあの使い魔はこう勝手に動き回るのかしらね、とルイズはため息をついた。
Fate/vacant Zero
第十二章 いつかの面影
さて。
才人は、久しぶりの親友なら水入らずで話すのが一番だろ、と誰にとも無く言い聞かせ、ルイズの部屋を辞していた。
実際のところは、溢れそうになった涙をルイズに見られるのが非常にシャクだからである。
自分でそれを認めるのもシャクなため、先ほどの建前を自己暗示したらしい。
こういう負けず嫌いもここまで来れば立派と言うべきなのかどうか。
とにかく本能的にルイズの部屋を抜け出した才人であったが、この学院における彼の行動範囲はまだそれほど広くはない。
その足は、自然と持ち主が一人になれそうな場所――寮塔の屋上へと向かっていた。
理由は簡単、頬に走った線を見られるのも、微妙に歪んでる顔を見られるのも、なんとなく嫌だったからだ。
そしてこれまでに行ったことがあり、かつ彼がこの学院で確実に一人になれると断言できそうな場所は、屋上だけだった。
そう、この時間なら確実に。
「友だち……か。あいつら、元気にしてんのかな」
屋上へと続く階段を昇る途中、胸に引っかかっていた一言を呟き、悪友どもの姿を思い描く。
あまり鮮明なイメージは出来なかったものの、それでも胸がズキリと痛んだ。
単なる悪友を思い出すだけでこのありさまである。
もしこれで恋人が向こうの世界に居たりしたらどうなってたんだろうな、と思いはしたが、才人に恋人などいないので想像は想像にしかならなかった。
ぞっとしない話じゃあるよなと思考を〆て、屋上を目指してひたすら昇る。
この階段を使うのは、確かこれで三回目だっただろうか。
少しは慣れたとはいえ、この距離だけは何とかして欲しかった。
今日は階段を吹き降りる風もなんだか強くて、がんがん体力が削れていく。
えっちらおっちら時間を掛けて階段を昇り、屋上へ続くドアが見える踊り場に辿り着き、
そこで違和感を目にした。
「開いてる……?」
何故だかそのドアは、内側――つまりこちらへと開け放たれていた。
道理でいつもより階段の風が強かったわけだ。
って問題はそこじゃないか。
誰か先に来
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