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fate/vacant zero
いつかの面影
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て取っ組み合いになったわね!
 わたくしの一発がうまい具合にルイズ・フランソワーズ、あなたのおなかに決まって」

「姫さまの御前でわたし、気絶いたしました」


 二人が顔を見合わせて、あははと笑った。

 ああ、なんかそれと似たような光景を知ってる気がするなぁ、俺。



「その調子よ、ルイズ。
 ああいやだ、懐かしくて、わたくし、涙が出てしまうわ」

「でも、感激です。姫さまがそんな昔のことを覚えてくださってるなんて……。
 わたしのことなど、とっくにお忘れになったかと思ってました」


 王女は深いため息をつくと、ベッドに腰掛けた。


  ――『懐かしい』、と思ってしまったのが間違いだったんだろうか。



「忘れるわけないじゃない。あの頃は毎日が楽しかったわ。なんにも悩みなんかなくって」

「姫さま?」


 アンリエッタの深い憂いを含んだ声に、心配になったルイズは沈んだ笑みを浮かべたその顔を覗きこんだ。


  前髪で目を隠したやつだの、触覚アンテナの金髪だの。

  そんな悪友どもと馬鹿をやって過ごした去年の記憶が、向こう・・・での楽しかった思い出が、とりとめもなく脳に溢れた。

  なんだかこのままこの部屋に居残っていると、うっかり泣きだしてしまいそうなほど胸が痛くなり、俺は――。



「あなたが羨ましいわ。自由って素敵ね、ルイズ・フランソワーズ」


「なにをおっしゃいます。あなたは、お姫さまでしょう?」

「王国に生まれた姫なんて、籠に飼われた鳥も同然。
 飼い主の機嫌一つで、あっちに行ったり、こっちに行ったり……」


 アンリエッタは、窓の外を眺めて、寂しそうに呟く。



「結婚するのよ。わたくし」

「……おめでとうございます」


 その声の調子があまりにも悲しそうで、ルイズはわずかに沈んだ声で言った。


 アンリエッタがルイズに振り向き、手を取ろうとして……、ドアを開いて廊下へと消える少年の後ろ姿を見て、固まった。



「あら……、ごめんなさいね。お邪魔だったかしら」


 パタリ、と静かな音がしてドアが閉まった。



「お邪魔? どうして?」

「だって、いま出て行った彼、あなたの恋人なのでしょう?
 いやだわ、わたくしったら。つい懐かしさにかまけて、とんだ粗相をしてしまったみたいね」


 しばしの間、質問の意味がわからずに固まったルイズは、アンリエッタの台詞を噛み砕き、理解し、秒の間もおかずに勢いよく首を横に振った。



「姫さま、アレはただの使い魔です! 恋人だなんて、冗談じゃ……



 出てった?」



 反論しかけたル
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