第二部
風の驚詩曲
乳姉妹の憂鬱
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に何事かと尋ねている。
「よって、本日は粗相があってはなりません。
急なことではありますが、今から全力を挙げて歓迎式典の準備を行います。
そのため、本日の午後の授業は中止。生徒諸君は正装し、一時間以内に門に整列するように」
生徒たちは、一斉に肯定の意を返した。
その表情の多くは、緊張と興奮に包まれている。
コルベールはうんうんと頷くと、念を押すように強く言った。
なお、才人は生徒ではないので頷いてはいない。
そもそも正装もないし。
「諸君らが立派な貴族へと成長していることを、姫殿下にお見せする絶好の機会ですぞ!
御覚えがよろしくなるよう、しっかりと杖は磨いておきなさい。
――よろしいですかな?」
魔法学院に続く街道を静々と進む、一台の馬車があった。
御者台の隅には金の冠ティアラが嵌められ、馬車には金に縁取られた銀や白金プラチナのレリーフが前後左右に二つずつ掛けられている。
その半分、銀のものはトリステイン王家の一員たることを示す紋章。
そしてもう半分、聖獣ユニコーンとなにかの結晶が先端に飾られた杖の組み合わせられた紋章は、この馬車の主が王女であることを示すものである。
見れば、この馬車を引いているのもただの馬ではなく、額から一本の捩れた角を生やした青いたてがみの白馬、『ユニコーン』であった。
無垢なる乙女しかその背に乗せないそのユニコーンは、王女の愛馬でもある。
王女を象徴するのにこれ以上の逸材はない、といわれるほどの駿馬だった。
馬車の窓には純白のレースのカーテンが引かれ、外から中の様子は窺うかがい知ることが出来なくなっている。
そんな王女の馬車に続くは、先帝亡き今、トリステインの政治を一手に握っているマザリーニ枢機卿の馬車である。
その馬車も、王女の馬車に負けず劣らずの立派さがあった。
いや、精悍さで言えばこちらの方が上かもしれない。
この風格の差が、いまトリステインの権力を握る者が誰であるのかを雄弁に物語っていた。
その荷台の馬車の四方を固めるのは王室直属の近衛隊、魔法衛士隊の精鋭たちである。
名門貴族の子弟で構成された魔法衛士隊は、国中の貴族の憧れとなっていた。
男の貴族は誰もが魔法衛士隊の漆黒のマントを羽織ることを望み、女の貴族はその花嫁となることを望む。
いまの御世における、トリステインの華やかさの象徴と言えるだろう。
一行が行く街道沿いは花々が咲き乱れ、居並ぶ平民たちの歓声に埋め尽くされていた。
特に平民たちの熱気には凄いものがあり、馬車が目の前
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