暁 〜小説投稿サイト〜
fate/vacant zero
第二部
風の驚詩曲
乳姉妹の憂鬱
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、必要と在らば敵を吹き飛ばす矛となる。

 ――ここまでは、前回にも話した通りだ」


 こくりと、何人かの生徒に合わせて才人が頷いた。

 フーケの土人形ゴーレムに使った魔法でまともに成功したのが『風』だったためか、いつもに増してその眼差しは真剣さをおびている。



「今日はまず、風が最強たるもう一つの所以ゆえんを教えておく。
 この魔法を適切に放つには最低でも『トライアングル』クラスの実力が必要であるため、諸君らの多くにはまだ早い代物ではあるが――これより、実演いたそう」


 どうもいちいち突っかかる物言いだが、才人は今は好奇心に支配されているので、そんなことはどうでもよかった。

 ギトーが杖を立て、呪文を詠唱し始める。



「Impreo, 満たしimpreo, 満たせBeorc 産まれよUr力――」



 低い声バリトンを朗々と紡ぎ、呪文を詠う。

 杖を持ち上げ、いざ魔法を発動させる為の一節を唱えようとしたとき。


 ガラッと突然扉が開き、なにやら緊張した様子のコルベールが乱入してきた。

 何事かとそちらを見てみると、彼はどこか普段と違ったなりをしていた。


 いつもの質素なローブではなく、大きな炎の刺繍や、波打つレースの飾りが胸の辺りで踊ったものを着ている。



「……ミスタ?」


 ギトーが怪訝な声を上げ、振り上げた杖を手と共に下ろす。

 集めていた魔力は、既に霧散していた。



「ミスタ・ギトー! 失礼しますぞ!」

「授業中です」


 斬り捨てるように言うギトーだったが、その効果は芳しくなかった。



「いえ。本日の午後の授業は、すべて中止となります!」


 コルベールがそう宣言した途端、教室のいたるところから歓声があがった。

 一部、興味深くギトーの魔法を待っていた生徒以外の声である。


 なお、才人は無論待っていた方だったりする。

 生徒じゃない方が、授業と言うヤツは面白いのかもしれない。



 ともかく、騒がしくなった教室を抑えるように両手を振り、後ろ手で手を組んで、コルベールは言葉を続けた。



「えー、皆さんにお知らせですぞ。本日はこの学院にとって、始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたき日であります」


 コルベールが、もったいぶった調子でのけぞる。



「恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見、我がトリステインがハルケギニアに誇る一輪の可憐な花、アンリエッタ姫殿下が、ゲルマニアご訪問よりのお帰りに、本日この魔法学院にご行幸なされます」


 どよっと教室中に緊張と動揺が奔った。

 よく分かっていない才人は、隣に座るルイズ
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