第二部
風の驚詩曲
乳姉妹の憂鬱
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つものように授業に参加するためにルイズにくっついて『風』の塔の教室を訪れた才人は、
いつもとは違う何かを感じて辺りを見回した。
いつもと変わらない『風』の教室、いつもとなんら変わることのない顔ぶれ。
いつもと違っていたのは、その視線の多くが才人の方に向けられていたことである。
どの視線も妙な真剣味を過分に含んでおり、才人は針の筵に座らされるようにビクビクしながらルイズの隣の席に着いた。
いったいなんなんだ? 俺が何かしたか!?
才人は内心でそう叫んでいたが、ある意味彼が何かしたと言えなくもなかったりする。
その理由は午前の授業が始まる少し前、いつものようにキュルケがルイズをからかったときのことだ。
いつもの調子で機嫌の悪さをからかわれた際、うっかりその理由、才人が魔法を使ったことを洩らしてしまったのである。
その上、それをキュルケが皆の前で肯定したのだ。
ただの平民が魔法を使ったなど、俄かには信じられない。
信じられないが、ルイズだけならまだしも、キュルケまでもがそれを見たという。
それらが強い警戒と猜疑心となり、視線に混じっていま才人を突き刺している。
要は才人が本当に平民なのかが判らなくなったので、それを見極めようということである。
非常に胃に悪い視線の群れはそれから5分後、ミスタ・ギトーが教室を訪れるまで続いた。
彼が教室を訪れた時、才人には漆黒のマントを羽織ったその姿に、後光がかぶさって見えたという。
黒い長髪を揺らめかせながら教卓へと下りていくその後ろ姿は聖者のようでさえあったとか。
それはあくまで才人の視点であり、他の生徒たちにとってはいつもどおりの、冷たく不気味な気配を放つ、怖い教師の姿でしかなかったのだが。
ギトーは教卓に着くと、静かになった教室をざっと眺め回して生徒の頭数を数える。
確かに全員揃っていることを確認して、一声を放った。
「では、これより授業を始める。諸君。私が以前、『風』こそが最強の系統であると講義したことは覚えているかね?」
「ええ、覚えていますわ、ミスタ・ギトー。あたくしの炎を、あっさりと散らしてくれましたわね」
キュルケが嫌味ったらしく吐き捨てた。
前の流水ラーグの日の講義のことを、根に持っているらしい。
まあギトーはそれに気付かなかったかのように普通に話を続けたので、効果は無いようだが。
「そう、『風』は全てを薙ぎ払う。
『火』も、『水』も、『土』も、『風』の前では在ることすら許されない。
目に見えぬ『風』は、目に見える全ての物から諸君らを守る盾となり
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