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fate/vacant zero
第二部
風の驚詩曲
乳姉妹の憂鬱
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愛しい人よミ・レィディ、手を貸してあげよう。
 ほら、つかまって。もうじき、晩餐会が始まってしまうよ?」


 ルイズの顔が、俄にわかに曇った。


「でも……」

「なんだ、また怒られたのかい?

 大丈夫だよ、ぼくからお父上にとりなしてあげるから」


 いつの間にか岸辺へと回り込んでいた子爵に差し伸べられた大きな手を、ルイズはそっと握る。



 そよぐ風に吹かれて、子爵の帽子が軽く跳ね上がった。

 つばの下から現れた、柔らかい光を湛たたえる瞳を見て、ルイズは――





















「――子爵、さま」



 穏やかな朝の陽光差し込む自室のベッドで、薄く目を開き呟いた。















Fate/vacant Zero

第十一章 乳姉妹ちきょうだいたちの憂鬱







「……ん?」



 ぴちゃぴちゃと頬を撫でる、熱いような涼しいような湿り気に、才人は目覚めをうながされた。



「んぁ? 起きたんか、相棒?」

「結構早起きだな、坊主」



 傍らからは聞き覚えのある中性的な声テナーと低い声バリトンが届き、それが自分の武器と借りモノの声だったことを思い出す。

 瞼の裏で感じる淡い赤は意識に朝が来たと伝え、頬どころか全身を煽あおる風は、昨夜自分が屋上に出たまま眠ってしまったことを示していた。


 ごしごしとまぶたを擦り、大欠伸を一つして、目をゆっくり開き。



「うをッ!?」



 赤い鱗とつぶらな紅い瞳がどアップで迫っていたのに派手にびびった。

 まあ、才人の声で鱗と眼の主もビクリとあとずさったが。



「あ……、フレイムか」


 距離が離れ、後ろに反り返って引っくり返ったその姿を認識し、ようやくそれがキュルケが貸してくれた火蜥蜴サラマンダーであることに気付いた。

 あと、目を開ける前に頬に感じた感触がフレイムの口元でちろちろと動いている舌であることも直感で理解した。


「わりぃ、驚かせちまったな。ありがとよ、あっためてくれて」


 きゅる、と一鳴きされた。

 気にするなということらしい。そう思っておく。


 それから昨夜立て掛けた姿のままの二振りにも朝の挨拶をかます。



「デルフ、シェル。おはよう」

「おはよー。いやぁ、相棒よくこんな風の強いとこで寝れたな。それも座ったままで」

「おはようさん。意外と野戦向きな体質してんなぁ、坊主。自由に操れねえのが惜しいったらねえや」

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