第二部
風の驚詩曲
乳姉妹の憂鬱
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―っとじっくり頬に赤みが差していく。
その変化が気になって、なんだなんだと立ち上がり、ルイズの視線の先を見据えてみた。
見たとたん、心に黒いものが憑おりてきた。
視線の先に居たのは、見事な羽帽子を被り、鷹とライオンをくっつけたような姿のしなやかな幻獣に跨った、凛々しい貴族の姿だった。
ルイズは、その貴族をぼんやりと眺めていたのである。
なんだか、気に食わない。
昨夜は昨夜で寝床から閉め出しやがったし、そもそも昨日は学園長への報告以降、声を聞いた覚えさえなかった。
俺を蔑ないがしろにしておいて、自分はいい男をじろじろ見つめて頬を染めてやがる。
ナメてんのか、伝説の使い魔ナメてんのか、魂逐瘴こんちくしょう。
むかむかした才人は、いいもん、とキュルケの方を振り向いた。
粗末に扱うんなら、お前の言いつけなんて聞いてやんねぇ、というわけである。
だったんだが。
振り返った先のキュルケは、ルイズと同様にぽーっと顔を赤らめて、羽帽子の貴族を見つめていたのだった。
ああ、そうだったね。
キュルケってば、惚れっぽいんでしたね……。
ふふふふふ。
どんよりと影を背負った才人は、ある意味頼みの綱である、四人目の人物の方を振り向いた。
その四人目、タバサはと言うと、才人の期待通りに王女もその一行もそれによって巻き起こっている騒動も、まったく意に介したそぶりもなく、いつもどおりに本を読み耽っていた。
「よかった……、お前はいつもと変わらないんだな」
なんだかほっとして、そう呟いた。
いや、何が良かったのかは俺自身も知らないんだけど。
なんとなくそう思っただけだ。
その呟きが聞こえたのか、タバサは顔を上げ、キュルケを見て、ルイズを見て、才人を指差して一言呟いた。
「三日天下?」
「……ほっといてくれ」
ぐふ、と安心したところへトドメを刺された才人は、膝からその場に仰向けに崩折れた。
そんな風に、派手に凹んだ日の夜。
才人は藁たばねどこに座り込んで、挙動不審な己の主人を見つめていた。
主人ルイズは唐突にざッと立ち上がっては、数秒で再びベッドに腰掛けなおし、枕を抱えてぼうっとしている。
もうかれこれ18度目ぐらいだろうか。
昼間にあの貴族を見てからというもの、ずっとこんな調子なのだ。
あれからルイズは口一つ開かず、生徒たちが解散してからも身動き一つしなかったので、とりあえずタバサに『空中浮遊レビテーション』を掛け
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