土塊つちくれの巨人
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歪んだ口元が、さらにその深みを増す。
他の杖たちと同じように壁に掛けられたそれを手に取り、フーケは妙な違和感を覚えた。
やけに軽い。
贋物か、と疑ってみたが、『解析ディテクト』を掛けたソレは、間違いなく『破壊の杖』のようだった。
ようだった、というのは、解析できたあまりにも意味不明な内部構造に首を傾げることしか出来なかったからであったりする。
いったいこの杖は何で出来ているのだろうと不思議に思ったが、それを考えるのは後でも良かった。
今は、この場から逃走することを優先せねばならない。
先の轟音で、いつ誰が起き出してきても不思議でないのだ。
ゴーレムの肩へと跳び、最後にいつものように背後へと杖を振る。
それによって己の仕事をした、といういつものサインを壁に刻んだフーケは、ゴーレムを再び動かしはじめた。
地上では、黒いローブを纏った何者かメイジを肩に乗せた土人形ゴーレムが再び歩き始めていた。
魔法学院の城壁を一跨またぎに乗り越え、ずしん、ずしんと大地を揺らしながら闇と葉擦れの音に包まれた草原を進む土人形ゴーレムは、圧巻というほかになかった。
で、なぜそれが俺から見えているかというと……、まあ要するに、まだドラゴンの足に体を掴まれたままなわけだ。
いや、いいんだけどさ。
この体勢、ちょっとロープが体に食い込んで痛いんだよな。
そろそろこの縄といてくれないかな、と思っていたのが通じたのか、タバサが『空中浮遊レビテーション』を掛けてくれた。
ふわりと体がドラゴンの足から放され、俺とルイズはドラゴンの背中までふわふわ運ばれた。
続けざまにタバサは杖を一振りして、俺の体にまとわりついていたロープを切ってくれた。
ああ、自由って素晴らしい。
こきこきと肩を鳴らしながら、お礼を言うのはもちろん忘れない。
「ありがとう。……また助けられちまったな」
こくり、とタバサが一頷きした。
この反応の薄さにもなんか慣れちまったなぁ。
それから才人は、気に掛かっていたことを二人に尋ねてみる。
「なあ。あいつ、土人形ゴーレムで壁をぶち抜いてたけど……、いったい何をやってたんだ?」
「宝物庫」
タバサが、簡潔に答えてくれた。
それで充分、ってことかね。
まあ、宝の庫くらの壁をぶち抜いてやるような事なんて、どこの世界でも同じだろうな。
「あの黒ローブが宝物庫から出てきて魔法を使ったとき、何かを握っていたように見えたわ」
ははあ。となると、やっぱりあれは。
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