微熱のお時間
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ひょっこりと顔を出したのは、キュルケの火蜥蜴サラマンダーだった。
気がついたら、なんでか右手が毛布から突き出されていた。
おいでおいでを無意識にしていたらしい。
……仕方ねえじゃねえか、寒さで凍えそうってか現在進行形で凍えてるんだから。
誰に言い訳してるんだ。フレイムにか。
自分の思考に自分でツッコミをいれていたら、右手が少し熱めながらも温かくなった。
いつものように、フレイムがすり寄っているらしい。
きゅるきゅるという声が懐っこく聞こえてくる。
ああ、やっぱこいつあったけぇなぁ、としばらく撫で回していたら、くいくいと袖を引かれた。
「ん?」
見れば、フレイムが部屋に戻ろうとしている。
才人の袖口をくわえながら。
「お、おい。どうしたんだ?」
まあ、フレイムは普通に火蜥蜴サラマンダーなわけで、喋れるはずもない。
一瞬こっちを振り向いただけで、またぐいぐいとキュルケの部屋に……、ってこらこらこら!
まずいって! 流石にそれは問題あるって! 俺はキュルケの使い魔ってわけじゃねえんだぞ!?
なんて心の叫びが届くはずも……あるかもしれないが一切気にせず、ぐいぐいと引っ張るフレイム……&、ずるずる引き擦られていく俺。
抗うわけにも行かず、そもそも抗えるような生易しい力でもなく、フレイムの出てきたドアをくぐってしまった頃。
なんだか、草原を遠ざかっていく羊の歌が、走馬灯のごとく映像つきで脳内を流れた気がした。
売られてゆーくーよー?
部屋の中は真っ暗だった。
あ、いや、フレイムの周りだけがぼんやりと明るい。
尻尾の炎の灯あかりかね。
そのフレイムが、扉を器用にぱたりと閉じた。
こいつはいったい、何を考えて俺をキュルケの部屋に連れ込んだのかね。
あれか? 毎晩どたばたやかましくて眠れないっていう苦情でもキュルケから出たのか?
そうだとしたら平謝りするしかないんだが。
それとも、フレイムの純粋な厚意かね。
使い魔同士の共感というか。
お互い大変だね、っていうか、そんな感じの。
「ようこそ、サイト。こちらにいらっしゃいな」
考え事をしながら立ち竦すくんでたら、部屋の奥の方からキュルケの声が聞こえた。
いや、こちらにいらっしゃいって言われてもさ。
「真っ暗でなんも見えないんだけど……」
へたに動いてなんか蹴っ飛ばして壊しちゃっても困るし。
すると、ぱちりと弾けた
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