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fate/vacant zero
黒の地下水
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 その間も、タバサは詠唱を止めない。

 あと、こめかみに十字というかX字というか……、青筋、と一般に呼称されるものが浮かんでいる辺り、相当頭に来ているらしい。



「二発め「わ、わかったわかった! 降参だ!
 降参するから、『雷撃』だけはもう勘弁してくれぇ!!」……(チッ)」


 とっても残念そうに小さく舌打ちをするタバサがそこにいた。

 こわい。







「知恵もつ短剣インテリジェンスナイフってわけなのね」


 未だに突き立っているナイフを前にして、シルフィードがつぶやいた。


 そう、"地下水"の正体は、一本の短剣だった。

 意思をその身に写された魔剣、『知恵もつ短剣インテリジェンスナイフ』だったのである。

 握ったものの意思を奪う能力を持ち、次々に宿主を変えてきた短剣。


 謎の傭兵"地下水"。

 正式銘めい『黒シェルンノス』は、そうして世界を渡っていたらしい。

 そりゃ正体不明で当然だろう。


 青筋が浮かんだままのタバサはというと、そんな傭兵ナイフを脅しながら事情を聞きだしていた。

 ちなみに、脅し文句は「『雷撃』ごうもん、水没まっさつ、土葬むきちょうえき。どれがいい?」だった。

 どれもこれも金属の身では地獄ではなかろうか。


 まあそんなわけで。ぺらぺらと"地下水"シェルンノスは知っている限りのことを話し始めた。

 相槌は主にシルフィードが担当している。



「お姉さまを苦しめるなんて、あなた強いのね」

「ああ、意思をのっとった魔法使いメイジの精神力が、俺自身の魔力に加算されるんだ」

「だから侍女の体をのっとったときはあまり強くなかったのね? 魔法使えないから」

「そういうこったね」


 悪びれない声で、"地下水"は言った。


「どうして、イザベラに雇われたの」


 今度は、タバサが質問する。

 いや、むしろ詰問というべきだろうか?


「そりゃ簡単な話さ。
 ガリアの"北花壇騎士団"は設立当時からのお得意さまでね。
 今回も、いつものように雇われた。そんだけさ。

 お前さんの知らないところで、俺は結構活躍してたんだぜ?
 まあ、北花壇騎士には横の繋がりがねえから知らないで当然なんだがね」


「では、なぜ傭兵をしているの」

「もっと簡単な話さ。暇だからだよ」


 淡々と"地下水"は答える。


「こちとら、短剣の身でね。寿命なんざねえんだ。
 "意思"を吹き込まれたら最後、退屈との戦いが始まっちまうわけだ。
 俺の知り合いなんかは、それで結構苦しんでたな。

 で、だ。
 どうせ戦うんなら、
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