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fate/vacant zero
第一部
外よりの 序 曲
厄日の使い魔
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夫か?」


 才人はそう言って、少女に手を差し伸べる。

 何も言わずに手をとって、そのまま無言で立ち上がる少女と……目が、あった。



「……ぅ」



 立ち上がった少女の姿を間近で捉えた才人は、思わずドキリとした。


 サラリと揺れる、シャギーの入った夏空色のショートヘアー。

 ルイズよりもなお白い白磁の肌した顔に、南の海のように鮮麗な青の宝玉が二つ鎮座して、こちらを見つめている。


 背丈はルイズよりさらに小さい。140センチあるかないかぐらいか。

 昼間のルイズと同じく、黒いマントの下にはブラウスとブリーツスカートを着ている……ようだ。

 ようだ、というのは、すこし距離が近すぎるのと、背丈が小さいのとで下のほうがよく見えないからだったりする。



 で、そんな蒼髪の少女はというと、才人の胸辺りと顔との間で視線を行ったり来たりさせている。

 見慣れない服や顔立ちやらが珍しいようだ。



「えーと……、だ、大丈夫か?」


 こくり、と肯く少女。

 そのまま手を離し、すれ違うようにして階段を上っていく。

 才人は視線を向け続けるが、結局一言もしゃべらないまま、少女は階段の向こうへと消えていった。


 ……怒らせちまったのかな?


 少し不安になったが、当の少女が立ち去ってしまった以上、才人には今さらどうすることも出来はしない。

 しばらくその場で固まっていたが、やがて才人もルイズの部屋へと歩き出した。



 あとには、窓から差し込む淡紫の月光に浮かぶ、階段の踊り場だけが残された。





 余談になるが、才人が部屋に帰りついた頃にはルイズは既に熟睡しており、才人は暗闇の中、月明かりを頼りに床の毛布を探し出す破目はめになったらしい。

 その際、うっかりルイズの下着を握り締めてまたもや慌てていたことは、彼と二つの月以外、誰も知らない。


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