第四十五幕:思い出は七色の虹へ
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時崎「あ、ああ!」
少し先を歩く七夏ちゃんに呼ばれる。いつも七夏ちゃんが気遣ってくれる。先を歩くのは七夏ちゃんだけど、実際は俺の側の少し後に居る感覚があるのは、七夏ちゃんの持つ見えない魅力のひとつなのだと思った。
草原の上にキラキラと光り輝く海。あの時の記憶と重なってくる。七夏ちゃんに初めてこの場所を案内してもらった時と同じ感覚だけど、このまま記憶を追いかけているだけでは、思い出に浸っているだけだ。今日、ここに来た事を新しい思い出となるように意識する。
七夏「到着です☆」
時崎「前も案内してもらったけど、綺麗な場所だね」
七夏「くすっ☆」
時崎「お弁当、ここに置いていいかな?」
七夏「はい☆ ありがとうです☆」
荷物から敷物を広げて、お弁当を置いた。広がる海と空を見渡すように眺める。もっと海が見える所まで歩くと、足元に街も広がってきてとてもいい眺めだ。七夏ちゃんも俺の隣に来てくれたけど、何も話しては来なかった。一緒に景色を眺めてくれている。ここで今、大きな虹が現れたら、どうなっていただろうか。
時崎「・・・・・」
七夏「・・・・・」
時崎「・・・・・」
七夏「・・・・・虹」
時崎「え!? まさか!?」
七夏「あ、えっと、前にここで虹のお話しをしました☆」
七夏ちゃんから虹のお話しをしてきた事に驚いたけど、冷静に考えれば自然な流れなのかも知れない。七夏ちゃんにも俺と同じように、この場所で以前の思い出があるのだから。
時崎「そ、そうだね」
七夏ちゃんにとっては苦手な虹。他の人と違う事を思い出させてしまう虹。翠碧色の虹。この虹にどのように触れて良いのか分からない。触れる事なんて出来ないのは分かっているし、俺には見る事さえ出来ないのも・・・だけど−−−
七夏「ここで分かった事も、たくさんあります」
時崎「分かった事?」
七夏「他の人と一緒じゃなかった事、一緒じゃないといじめられる事・・・」
時崎「七夏ちゃん・・・」
七夏「でも、助けてくれる人が居る事、一緒じゃなくてもいいって話してくれる人も居る事」
七夏ちゃんの「ふたつの虹」が綺麗な翠碧色に輝く。七夏ちゃんの本当の瞳の色は分からないけど、真っ直ぐに相手の心を捉えた時が本心であり、その時の色が本当の色なのかも知れない。
時崎「俺は、どんな色でもいいと思ってる。一緒に居て、同じように眺められるだけで嬉しい」
具体的な事は言わなくても、七夏ちゃんには伝わっているはずだ。
七夏「本当は、七色の虹も見てみたいなって思ってます。でも、その理由は、他の人と一緒じゃないからって思ってましたけど、今はそうじゃなくて−−−」
時崎「ああ! 分かってるよ」
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