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ヒュアデスの銀狼
SS2  オイシイゴハン
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付けられた魔女は、血を流しながらピクピクと痙攣していた。
 そしてカズは、パカッと口を開けた。その口から灼熱の炎の火球が放たれ、魔女に触れた瞬間、爆発した。
 爆炎が楽園のような世界に舞い、やがて炎が鎮火すると、そこにはグリーフシードだけが残された。
 カズは、鋭い爪の生えた指で、グリーフシードを摘まむと、それをそのまま口に運んだ。
 ガリ、ボリ…っと、音が響く。
 そして、やがてゴクンッと飲み込んだ。
「う…ぐ…!」
 カズは、自分自身の体を抱きしめるようにして、その場にうずくまった。
「はあ…、ハア!!」
 カズの体が徐々に狼男の姿から、人間のソレへと変化していった。

 カズは、他の魔女…いやグリーフシードを喰らうことで、力を身につけられる。
 それは、長所なのか短所なのかは分からないが、相応に痛みも苦しみもあった。
 これが何なのか、カズには分からない。かつて魔法少女だった者が味わった苦痛だろうか、絶望だろうか? それが痛みという“味”で現れるのか。
 マルフィカ・ファレス……、魔女の肉詰めという歪な存在であるがため、存在が不安定なのだろうか?
「かえ…らなきゃ…。カンナが…待ってる…。」
 自分を拾ってくれた存在。
 自分にとって、名前をくれた存在。
 自分を必要としてくれる存在。
 カズにとって、カンナがすべてだった。
 カズは、激痛が走る体をおして、立ち上がり、結界に手をかざして、穴を空け、そこから外へ出た。
 廃ビルの中に戻ると、そこには、バタバタと床に倒れた人間達がいた。魔女が死んだことで魔女の呪いも解けたのか、首筋の痣は消えていた。
 カズは、そんな人間達を無視して、足を引きずって屋上へ向かった。

「おかえり。」

 屋上に行くと、月を眺めていたカンナが振り向いて、そう言って出迎えてくれた。
 カズは、その姿と声を聞いて、ホッとしたのか、その場に倒れた。
「……カズ。」
 カンナがカズに近寄り、その場に膝をついた。
「…美味しかった?」
「………うん。美味しいご飯…、もっと食べなきゃ…。」
「…そうだね。もっと食べて強くなって。そして…、アイツをあっと驚かせるオオカミにならないと。」
「カンナ…。オレ…、カンナ、必要?」
「うん。必要だよ。だから、拾ったんだよ。」
「…うん。オレ…カンナのため、生きる…強くなる…。」
「死んじゃダメだからね? じゃないと、許さないから。」
「……。」
「あれ? 寝ちゃった? もう…。しょうがないなぁ。」
 眠ってしまったカズに、カンナは、苦笑し、膝を貸し、膝枕をしてあげたのだった。

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