暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 18
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ら今直ぐ解け! 解放しろ! その細首、一捻りにしてやる!!」
 「せっかちな男はモテないわよ?」
 「うっせぇよ、クソババア!!」
 「女は少しくらい年を重ねたほうが魅力的なのに、それも解らないなんて。残念な童貞ね」
 「余計なお世話だ!! アンタ、本当に何なんだよ!?」
 「アリア信仰アルスエルナ教会の次期大司教で、貴族の称号と医師と薬師の資格を持つ者。プリシラ=ブラン=アヴェルカイン様よっ!」
 「自分で様を付けるな! もういっそ、全部剥奪されてしまえッ!」
 「やれるものならやってごらんなさぁーい」
 暗い部屋の中でぎゃんぎゃん吼えまくる囚人と、うふふあははと朗らかに笑う一応偉い人。
 誰がどう見てもおかしな一幕は

 「ま。解放はしてあげるけど。逃げようなんて考えないほうが身の為よ? 特に夜は」
 「は?」
 真顔に戻ったプリシラが唐突に止めた。

 「オレに逃げられると厄介な事でも……」
 「貴方は、ミネットに感謝するべきなの」
 嫌味の一つでも言おうとしたクァイエットを遮り、プリシラが青年の体に巻き付いている縄を一つ一つ解いていく。
 「貴方の勘は強ち的外れでもなかった。確かに敷地の外には危険な仕掛けがたくさんあったの。ただ一つ外れていたのは、その危険な仕掛けを私達の仕業だと思っていた事。貴方、ミネットが部屋に入ってこなかったら敷地の外へ逃げ出していた可能性も有ったでしょ? 危険だと察していても。そうしなくて正解だったのよ」
 最後に左足の拘束を解いた彼女は、静かに背筋を伸ばし
 「此処は、都民があまり良い顔をしない孤児達の家。そして私は、多方面に繋がりを巡らせている権力者」
 閉じた窓の外側に目線を送り
 「邪魔に思っている人間は、数を数えるのも莫迦らしくなるくらい居るということよ」
 「? ……………………ひぃっ!?」
 プリシラの視線の先を辿りながらのそっと立ち上がったクァイエットの視界にも、同じ物を映し出させた。
 溶けるような黒い闇の中に浮かぶ、二つの銀色の玉を。愉悦に濡れた唇を。
 そして、燭台や月の光を受けてチカチカと光る刃を。
 「な……、なん……っ!?」
 「命拾いしたわね、クァイエット君」
 机の端に頭をぶつけながら床にへたり込んだ青年を見下ろし、プリシラは優しく微笑む。
 まるで、聖母のように。

 「素敵な番犬(あんさつしゃ)が見守っているこの聖なる学び舎で、精一杯生きる術を吸収しなさい。貴方のお父様が遺していった母親違いの弟、キースと一緒に、ね」


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