第18話
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
民者との生存競争と位置付けているレンチェフにとって、殺しすぎることや残虐さ、攻撃性にケチを付けない上司は貴重だ。軍隊とは違うだろうリリアナという集団への不安はあるが、慣れれば悪い職場ではないと楽観できる。同僚が美人というのも良い。
「改めて名乗っておくか。俺はレンチェフだ。よろしく頼む、シーマ」
「私はシーマじゃありません」
「ああ、海兵隊とは別人……」
「だから、海兵隊とかシーマとか、全然違います! 私の名前はシマ。シマ・ハチジョウです」
「シマ・ハチジョウ……日系人か」
ジオン公国の日系人で最上位者といえばケイ・タキグチだ。シーマ・ガラハウ同様にレンチェフは面識がないが、さすがにギレン総帥の信任篤い公国最高顧問の名前と顔は知っていた。
そして、日系人は他の人種に比べて強固なコミュニティを持つ。緩やかな体制派でしかない日系人コミュニティはザビ家の特定の誰かに肩入れしたり敵視しているわけではないが、こうして送り込まれている以上、ギレンへの情報流出は時間の問題だ。戦闘団の設立経緯を考えれば、既に知られて――
「違います!」
――いるとは限らないようだ。強い口調で否定する女性兵士に、レンチェフは首を傾げた。
「……いや、あんたはアジアンだろう? アジアンじゃない俺には区別が難しいが、あんたはキムチ臭くないし美人だ、コリアンでもチャイナでもない。ヤーパン……ニッケイ(日系)じゃないのか?」
「私は日系じゃありません! 日本人です!」
シマの主張にレンチェフの思考が一瞬止まる。
野良犬は、シマはレンチェフの先輩だから面倒を見るように、と言っていた。これはレンチェフと同じ途中参加組、リリアナではなく独立重駆逐戦闘団の人間ということだとレンチェフは解釈していた。シマはジオン公国の女性兵士だと。
だが、シマは自身のことを日本人と言っていた。それは、つまり。
シマはジオン公国の軍人ではなく。
「私はシマ・ハチジョウ。故郷の言い方なら八丈志麻。地球連邦軍の少尉です。よろしく、ミスター・レンチェフ」
敵だった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ