第五章
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トファルドフスキは突然讃美歌を歌いはじめた、するとだった。
彼を乗せていた魔界の馬が苦しそうにいななき彼を振り落として月、魔界の入り口がある方に慌てて駆けていった。
その光景を見てだ、悪魔は驚愕の顔で言った。
「気様、まさか」
「悪魔は讃美歌を嫌うな」
「その通りだ、それでか」
「ここで唱えればどうなるか」
「くっ、馬は逃げてだ」
「御前も苦しいな」
「胸が焼けて仕方ない」
讃美歌を聴いたからだ、悪魔にとっては讃美歌は実に嫌な音でしかないのだ。それこそ聴いただけで気分が悪くなる。
「お陰で気様への契約への強制力もだ」
「消えたな」
「その通りだ、だが貴様はもうだ」
悪魔は苦しむ中で言った、彼は苦しむ馬を何とか御しているだけだ。
「ここから地上に戻れずだ」
「宙を浮くだけか」
「地球と月の間をな」
「そうか、しかしな」
「それでもか」
「私は御前に仕えることはなくなった」
「そのことで満足か」
「御前を出し抜いたことがな」
悪魔である彼をというのだ。
「それだけで充分満足だ」
「やってくれたものだな」
「この通りな、ではな」
「それではか」
「私はこのまま最後の審判の時までここにいよう」
「そうするのか」
「これからな」
「全く、最後の最後までだ」
悪魔は顔を顰めさせて言った。
「御前にはしてやられたままだったな」
「ははは、用心はしておいてよかった」
「旅籠に連れて行った時は勝ったと思ったがな」
それがだったのだ。
「こうなるとはな」
「そうだな、ではだ」
「これからはだな」
「ここにいよう」
最後の審判のその時までというのだ。
「思うまま宙を飛んでな」
「そうしたいならそうしろ、だがだ」
「だが。何だ」
「これも腐れ縁だ」
笑ってだ、悪魔はトファルドフスキにこうも言った。
「時々だがな」
「会いに来るというのか」
「話し相手になってやる」
こう言うのだった。
「そうしてやるからな」
「そうか、では来た時はな」
「何かと話そう」
「その時を楽しみにしている」
「それではな」
ここで二人は一旦別れた、そしてだった。
トファルドフスキは最後の審判の時まで月の近くの宙に漂うことになった。時折月に降り立ってそこで歩いたり寝たりもするが。
よく悪魔が来て彼の話し相手になった、このことについて悪魔は自分から言うのだった。
「不思議だ、二百年も一緒にいたからな」
「散々出し抜かれてもか」
「不思議と情が出る」
「それは私もだ」
トファルドフスキもというのだ。
「何だかんだでな」
「情が出ているか」
「だから御前が来てくれると嬉しい」
こう悪魔に言うのだった。
「何かとな」
「そうか、ではな」
「これから
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