第六章
[8]前話
「とにかく変なものに化けるんです」
「それで今回は堆肥に化けたんですね」
「俺達にはわかりました」
今度はビョルコリトゥンが答えた。
「何しろ兄弟ですから」
「妻が何に化けるかをですか」
「はい、わかっていて」
それでというのだ。
「今みたいにしました」
「小便をかけようとですか」
「そうすれば流石に姉さんも出てきますから」
「全く、変なのに化けたら誰も気付かないからしてるのに」
その変なものに化けることが好きな女の言葉だ。
「あんた達にはばれるのね」
「だから兄弟だぞ」
「わからない筈がないだろ」
「お前ならと思っていたらな」
「本当にそうだったな」
「やれやれね、こうなっては仕方ないわね」
流石の六つ頭も観念した顔で述べた。
「もう謝るしかないわね」
「早く謝れ」
「さもないと本当に気が済むまで殴るよ」
二人は自分達の姉妹に本気で告げた。
「俺達も怒っているから」
「半殺しにするぞ」
「やれやれね」
六つ頭は悪びれない、それでもだった。
確かに謝った、これで二人も許し仲直りの宴となった。ここでチョグルティは二人にあらためて話した。
「もう妻にはです」
「酒は飲ませない」
「そうしてくれますか」
「はい」
このことを約束した。
「二度とあんなことがない様に」
「全く、血を分けた姉妹だからいいでしょ」
今も悪びれず言う六つ頭だった。
「些細なことなのに」
「何処が些細だ」
「本当に俺達だから生きているんだよ」
「普通死ぬぞ」
「姉さんの酒癖は有り得ないよ」
「だから謝ったでしょ」
六つ頭は今度は怒る二人に逆に怒り返した。
「だったらいいでしょ」
「本当に反省してないな」
「そこも子供の頃からだね」
「いい加減にしないと殴るぞ」
「それも気が済むまで」
「謝ったからいいでしょ」
兄弟に対してなおも言う。
「こうして仲直りの宴も開いたし」
「全く、やれやれだよ」
チョグルディは二人と妻の間に入って述べた。
「今回のことは」
「全部私のせいだっていうのね」
「実際にそうだよね」
「そうであってもこれで一件落着よ」
「そう、一件落着ならね」
「ええ、二人には好きなだけ飲んで食べてもらうわ」
六つ頭は最後には観念した、そうしてだった。
自分は飲まずに迷惑をかけた兄弟達にしこたま飲んで食ってもらった、最後にはかなりのお詫びの品を渡してようやく仲直りとなった。兄弟達もここで彼女を許し家に帰った。シベリアに伝わる遠い昔の話である。
何に化けたか 完
2019・1・15
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