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人理を守れ、エミヤさん!
風前の灯、少女達の戦い (後)
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いたキメラの口に腕を突っ込んだ。

「イリヤぁ!」
『イリヤさん、後ろですっ!』
「え?」

 美遊の悲鳴、ルビーの喚起。イリヤが振り向く先に、赤いフードの暗殺者が立っていた。彼女を噛み砕かんとした牙で腕を圧搾され、しかしコンテンダーの銃撃を口腔より脳天に貫通させた暗殺者は、立ち竦む白い少女を首を巡らせて振り返り……背中越しに声を掛けた。

「無事か」
「ぇ……お父……さん?」

 イリヤはその背中に――普段は情けない、自分の父の後ろ姿を幻視する。
 暗殺者はそれに応えない。端的に告げる。

「火力は申し分ない。だが、立ち回りが致命的だな。とても見れたものじゃない」
「ご、ごめんなさい……!」

 淡々としながらも、切嗣は短機関銃の射撃を止めなかった。イリヤは切嗣の顔が見えない故に、その腕の傷の酷さに顔を青くしていたが――続く切嗣の言葉に眼を白黒させた。

「少しはそこの、美遊という娘を見習え。だが今すぐに学習しろというのも無理な話だ。担ぐぞ」
「え? え? わ、わわわわ!?」

 切嗣は短機関銃を捨てると、無造作にイリヤの矮躯を担ぎ上げた。大いに慌てるイリヤを無事な腕で抱えると、彼は合理的に言う。

「立ち回りは僕がやる。君は敵を撃つことだけに集中しろ。いいな?」
「は――はいっ!」

 頼りになる……不思議と安心する。イリヤはこんな時なのに胸を踊らせた。切嗣はフード越しに美遊を見る。

「美遊・エーデルフェルト」
「は、はいっ」
「君に言うことはない。その調子でやればいい。コフィンの守りを任せる。二十秒保たせるだけでいい」
「……はい!」

 美遊はこの暗殺者に苦手意識があった。只管に苦手、それだけ――なのに、間違いはないと信じられるのは何故だろう。
 切嗣が加速する。自身の常識を超える超速にイリヤは眼を回しそうになりながらも、ルビーの補助のお蔭か誤射もなく次々と雑兵を駆逐していった。イリヤの持つ膨大な魔力にものを言わせた魔力弾は、エンシェントゴーストやキメラ、デーモンをも次々と屠っていく。
 無限に湧き出るエネミーの数が目に見えて削れていくではないか。イリヤは己を肩車する暗殺者が――士郎や英霊エミヤのように、自分に近しい誰かなのでは……もしかすると、あの人なんじゃないかと感じ始めていた。

 敵の出現するペースを上回る撃破効率。切嗣は宝具の酷使に口から血を溢れさせているが、フードの下にそれを隠していた。

 アタランテが魔神柱の撃破に参加する。削り切らんと弓を引き絞った。刻一刻とハサンが消滅していく。百体の山の翁が半数を切った。
 そして――アグラヴェインが血塗れになり、両腕を失った体で。口に、英霊エミヤが投影して備蓄していた宝具を咥えた。

「勝機を作る。これ以上は
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