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人理を守れ、エミヤさん!
風前の灯、少女達の戦い (前)
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。握り締めた拳から血を滴らせているロマニは、遅れて気づく。自分の声も、顔も、纏う空気すら硬質な軽口に、同調できる人間なんていないだろう。
 ロマニは嘆息して、やるせなさそうに握り拳を解いた。そして少女達に言う。サッと腕を振ると血の滲んだ手袋は白さを取り戻していた。

「気分が悪くなったなら、休んでいてもいいよ」
「……いえ。見てます」

 ふわふわとしていた、現実感の欠如を塞ぐ破壊的な初戦だった。
 イリヤは青白い顔できっぱりと言う。見ている事しか出来る事がない。士郎は言っていた、カルデアの人達は全員が戦っている。戦わないでいるのは、赦されない。美遊もまた赦されてはいけないと、今ようやく感じられた。
 だが普通の女の子のイリヤには厳しかったのだろう。青い顔のまま、医療班の人に付き添われて管制室から離れていった。それを咎める事は誰もしない。出来ない。しかし美遊は残っていた。

「美遊ちゃんは休まないのかい?」
「はい。お兄ちゃん……士郎さんは、戦っています。何もしてないのに逃げられません」

 蒼白な顔のまま、だがその琥珀色の瞳は現実に向き合っている。ロマニはその目を覗き込んでいた。そして何かに気づいたように、キミは……と目を見開いた。しかしすぐに頭を振り、ロマニは美遊の意思を尊重する。
 時間経過で食事、休憩、仮眠を挟みながらカルデアは武器を用いない戦いを続けた。
 カルデアに逃げ場はない。イリヤは暗い顔のままだったが、時間が経つと戻ってきた。モニターしている士郎の無事な姿を見て、それでようやく安堵したようである。あのまま士郎が死んでいたら、彼女は過酷な戦場の空気に耐えられなかったかもしれない。

 二度目のアルケイデスとの戦い。士郎の作戦で敵サーヴァントに多大な損害を与える事に成功する。その後、ダ・ヴィンチやアグラヴェインとのやり取りの後に士郎が突然言った。カルデアの防備を固めろと。それを受けてアルトリアが退去して来て、アタランテや切嗣が急ぎ再召喚される。
 何を彼が感じたのか、美遊には分からなかったが。けれど漠然と緊張する。ロマニがカルデアの職員達を最低限残して下がらせ、百貌のハサン達に管制員を半数交代させた。各区画を封鎖しシステムをロックし、厳重な警戒態勢が敷かれる。

 やがて第三特異点の三回目の戦い――決戦が繰り広げられる。

 順調に皆が敵を倒していく。士郎が固有結界を使用した。
 その辺りからだ。唐突に、レイシフトしている皆との通信が途絶した。

「……これは、ビンゴっぽいな」

 ロマニがダ・ヴィンチとアグラヴェインと目配せする。万能の人はあくまで柔和な面持ちで驚いた素振りを見せた。
 図ったようなタイミングだ。これまでもカルデアの通信は安定していなかったが、今回ばかりは余りにも出来過ぎ
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