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ある晴れた日に
116部分:谷に走り山に走りその十二
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谷に走り山に走りその十二

「豚に似ていいわよね」
「そうでしょ。癖は強いけれどね」
「そうね。お肉も硬めだけれど」
 本当に知っているのだった。
「いいわね。確かに」
「そうそう。冬の人気メニューの一つなのよ」
 明日夢はにこにこと笑いながら述べる。
「牡丹鍋ね」
「あれ私好きなのよね」
 田淵先生は笑顔で彼女達に語る。
「だから北乃さん」
「はい」
「また冬。御願いね」
「わかりました。またいい猪用意しておきます」
「ええ。それじゃあそういうことでね」
「けれどまあうちの店じゃな」
 佐々がまた言ってきた。
「こういうところから猪仕入れていたんだな」
「熊もだよな」
「多分な。そっちのルートはどんなのか俺は知らなかったんだよ」
 坪本に対して答える。
「野生動物のルートはな」
「野生はかよ」
「そっちは親父のあれなんだよ」
 彼の店ではそうらしい。
「そっちはな。とにかくだよ」
「とにかく?」
「猪な。また手に入るといいな」
「呑気だな、おい」
 坪本は猪が出ると聞いてもこう言って店のことを口にする佐々に対して言った。少し呆れた声になっている。
「猪の体当たり受けたら洒落じゃ済まねえのによ」
「そうだけれどな。食えるからな」
 やはり言うのは食べ物に関することだった。
「別にいいんだよ。ただな」
「ただ?」
「どうしたんだよ、それで」
「足元な」
 彼もまた嫌そうな顔で足元の石を蹴って道の外側にやるのだった。
「石が多くなるのはな。困ったものだな」
「全くだよ。何だよこれ」
 春華はまた石を蹴っていた。
「多過ぎだろ?卑しい猪だな」
「この辺り山芋もあるのよ」
「山芋が」
「それでなんですか」
「自然薯。これもいいのよね」
 また笑顔で語る田淵先生だった。
「すってそれを白い御飯にかけてね。いいわよね」
「おうどんにもね」
 江夏先生がまた田淵先生に応える。
「思いきり熱いおうどんにね」
「そうそう」
「何かこの先生達ってよ」
「だよなあ」
 皆そんな先生達の笑顔での話を聞いて顔を見合わせるのだった。
「食い物ばかりだよな」
「何があっても動じないし」
「野生の動物で動じていたらどうにもならないわよ」
「そうよ」
 田淵先生も江夏先生も言う。
「だからよ。そんなことは気にしないで」
「食べないと」
「小石がうざいんだけれどな」
 正道もまた不平を言いながら足元の小石を蹴っていた。とにかく猪があちこちを掘り返したおかげで小石があまりにも多くなってしまっているのだった。
「大体山芋なんて人間が食うものだろうが」
「それ向こうも思ってるわよ」
 しかしここで未晴が彼に言うのだった。
「だって。猪も生きているから」
「向
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