第二章
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「武器ですわね」
「普通歌手は上手な歌を武器にするけれど」
「ここまで下手ですと」
「もうな」
「兵器になりますわね」
「日本の漫画のあれやね」
チュットは酷い声での音程も何もあったものではない歌を聴きつつチュットに話した。
「何とかリサイタルか」
「猫型ロボットの漫画ですわね」
「あれか昔お金持ちの奥さんが無理に録音した」
クラシックの話である。
「そんなな」
「もうどうにもならない」
「そんなや」
まさにと言うのだった。
「恐ろしい歌や」
「その域ですわね」
「私達の治める地域には九十五億人いるけど」
「ここまでの音痴は」
「そうおらんやろ」
「九十五億の中でも五本の指ですわね」
「そこまでいくかもな」
それ程までの音痴だと話しつつだ、二人は墓地の中を歩いて調べていくと墓地を管理していると思われる寺の入り口にだ。
白い兎人の少女が歌っていた、少女の口からその歌が聴こえていた。
そしてその歌が終わったところでだ、二人は出て来てだった。少女に話を聴いた。
「貴女歌の練習してるん?」
「はい」
少女はチュットの問いにすぐに答えた、楚々とした身なりで大人しい口調だ。しかも返事の声は実に清らかで美しい。
「そうですが」
「練習している理由は」
「実はこの度姉が結婚しまして」
少女はすぐに答えた。
「それで、です」
「貴女がそこでお祝いの歌を歌うんやね」
「そうなっていますがどうも最近」
少女はチュットに困った顔で答えた。
「この通りです」
「歌が酷いんやね」
「琵琶に合わせて歌っていますが」
それでもというのだ。
「そうするとどうしても」
「ではですわ」
ここでズーが少女に言った。
「一度琵琶を使わずに」
「そうしてですか」
「歌ってみては如何でして」
「それでは」
少女はズーの言葉に頷いてそうしてだった。
今度は琵琶を使わずに歌ってみた、すると天国から聞こえて来る様な美声で見事な歌を聴くことが出来た。
それでだ、聴き終えた二人は拍手をしてからそれぞれ少女に言った。
「よかったわ」
「まさに名歌手の歌ですわ」
「アイドルにもなれるで」
「バンドのヴォーカルもいけますわね」
「はい、ですが琵琶を使いますと」
少女は今度は琵琶を使って歌ってみた、カンボジアの琵琶だ。
するとまた酷い声で酷い歌になった、それでチュットは少女に言った。
「あの、もう琵琶は使わへんで」
「それで、ですか」
「歌った方がええで」
「ですが結婚式の歌はどうしても」
「琵琶を使わへんとか」
「正式に歌うとそうした歌でして」
それでというのだ。
「私にしましても」
「それを使わなあかんか」
「どうしても」
そうだと言うのだった。
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