第五章 トリスタニアの休日
第二話 最高の調味料
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と、もごもごと声量を段々と落としていく。小さな笑顔を浮かべたまま、ルイズが小首を傾げると、客は顔を真っ赤に染めた。
「君は他の女の子達とは随分と違うように見えるんだが、ここに来るまではどこにいたんだい?」
「それは……」
「あっ……べ、別に無理に聞き出そうとは」
「……ありがとうございます……それでは失礼します」
しおらしく目を伏せ軽く頭を下げ、去って行くルイズを、客はぽーとした顔で見送る。
「……可憐だ」
「――――計画通り」
魂を口から零しているかのような客の姿に、店奥に隠れて覗いていた士郎がガッツポーズをとった。
「何が計画通りなのよ」
「ジェシカか」
後ろから歩み寄ってくる気配は事前に感じ取っていた士郎は、慌てることなく背後を振り返る。振り返った先には、豊かな胸を強調するかのような仕草で腕を組んだジェシカが目の前にいた。身体を横に曲げ、ジェシカが士郎の脇からルイズが先程対応していた客の様子を覗く。
「ふ〜ん」
感心したような声を上げると、ジェシカがじろりと上目遣いで見上げてくる。それに目を逸らすことなく視線を合わせた。
「何だ」
「随分と様子が変わったみたいだけど……何したの?」
「別に大したことじゃない。元々ルイズが持っていた魅力のいくつかを見れるようにしただけだ」
「だから〜何したってのよ?」
含むような言い方に、ジェシカが頬を膨らませ抗議の声を上げる。ぷくりと膨らんだ頬を眺めた士郎は、肩を竦めふむと前置きを置き、
「元々ルイズは高度な行儀作法を収めている。今まではプライドがそれを邪魔していただけだ」
「それで」
「だから今朝、俺はルイズに三つのことを約束させた」
「約束?」
首を傾げながら続きを促すジェシカに、士郎は指を一つずつ伸ばしながら説明を始めた。
「一つは小さく笑うこと」
「小さく?」
「そう小さくだ、口元を微かに曲げる程度でな」
訝しげに目を細めるジェシカに、頷きながら補足する。
「二つ目は着かず離れずの距離にいること」
「近くにいなくていいの?」
「近寄り過ぎたら、客がちょっかいを出してきて、ルイズが客を殴ってしまうだろ」
「ま、そうね」
うんうんと頷くジェシカに苦笑いを返すと、視線を客の相手をするルイズに移動させる。
ルイズが客の相手をする時間はごく短い。精々一〜二分程度だろう。最初に相手をした客同様、客に料理を運び、頭を下げるだけ。しかし、ルイズが客の前から去ると、客は魂が抜けたような顔でルイズの後を追うようになる。
客席の様子を見ながら、人差し指と中指の二本を立てた手で頬を掻く。変わらず見上げてくるジェシカに、頬を掻いていた手を向けると薬指を立てた。
「最後の三つ
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