第五章 トリスタニアの休日
第二話 最高の調味料
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、ダラダラと汗を流しながら足元に転がる士郎を見下ろす。
「……何か……ごめん」
「……いや、いい」
『魅惑の妖精』亭で働くようになってから四日目の夜。屋根裏部屋にある小さなベッドの上で、ルイズは士郎の身体にしなだれかかっていた。
隣に座る士郎に腰を回し両手を士郎の胸に当てながら、潤んだ瞳をゆっくりと持ち上げ。湿った吐息を耳に吹きかけるように……
「ッッ無理よこんなのっ!!」
ベッドから飛び降りると同時に叫んだルイズは、溜め息をつく士郎に指を突きつけた。
「何が訴えかけるような瞳で囁けよ!! 意味分かんないっ!!」
「……と言われてもな」
事の起こりは今日の朝のことだった。
スカロンが従業員の少女達を前にし、チップレースの開催を宣言した。どうやらこのチップレース、この『魅惑の妖精』亭が出来た頃からの伝統行事であり。優勝者に対し、この国の昔の王が惚れた給仕の娘に送ったという。『魅了』の魔法がかけられたビスチェが一日貸し出されるそうだ。その力は凄まじく、着ればあの(・・)スカロンさえアリかな? という考えさえ浮かんだ……直ぐに死にたくなったが。
そして始まったチップレースでは、いつも以上の頑張りを見せる少女達に応えるように客たちはチップを振りまいた。
……ルイズを除いて。
チップレースが始まりルイズも努力したようだが。結局はいつもの通り客にワインをぶっかけたり、殴る結果となった。そんなルイズにチップを払う客はもちろんおらず。結果ルイズの手の中に一枚もチップがなく。店が閉まり、周りの少女達が手に入ったチップの量に一喜一憂している中、ルイズは悔し気に顔を顰め俯いていた。
そしてチップレースの一日目は、明日も頑張るようにとスカロンが少女達を労い終了となった。
そして……。
肩を落とし、屋根裏に向かって歩いていくルイズの肩に手を置き、「気にするな」と慰める士郎に向かってルイズは言ったのだ。
「わたしに男のあしらい方を教えて」――と。
そして今、士郎は顔を真っ赤にして俯くルイズに指導を行っていた。
「って言うか何で俺なんだ? 店の子達の誰かに聞けばいいだろ?」
「うっ……だってそんな恥ずかしいこと聞けないじゃない」
「俺だったらいいのか?」
もじもじと身体を揺するルイズに苦笑する。
「は、恥ずかしくないわけじゃないけど……でも、シロウだったらその……」
「ん?」
段々と声が小さくなり、聞き取りにくくなったため、士郎が身を乗り出しルイズに近づく。すると、ルイズは士郎の頬に手を当て、そっと耳元に顔を近づけ小さく囁いた。
「シロウだったら……
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