第五章 トリスタニアの休日
第二話 最高の調味料
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教えないから。ね? お・ね・が・い」
士郎を閉じ込めるように壁に付いていた右手を離すと、士郎の胸を指先でなぞり始めた。割れた腹筋の切れ目をなぞる指先に、背筋をゾクリと寒気とも快感とも言えない感覚が襲う。これはやばいと反射的にジェシカの手を取る。
「ちょ、ちょっと待てジェシカ」
「あら何? 教えてくれる気になった?」
「いやそう言うワケじゃなくて」
「じゃあどう言う意味?」
手を取られたジェシカは、自分の手を掴む士郎の手を残った手で包むように握り、さらに身体を密着させる。近付いてくるジェシカから逃げるように後ずさりしようとした士郎だったが、背後は壁であったため、逃げ場はなかった。逃げ場のなく、焦った顔を見せる士郎を上目遣いで見上げたジェシカは、止めとばかりに、士郎の首に手を回そうとする。
「ちょ、待て」
「きゃっ」
首に向かって伸ばされる手を右手で捌きながら、ジェシカの後ろに回り込む。そのまま逃げれば良かったのだが、バランスを崩して壁に衝突しそうになったジェシカの手を引っ張った結果。
「……あ」
「おい大丈夫か?」
抱き寄せられ、士郎の胸に顔を押し付けられた格好になったジェシカは、一瞬呆然とした顔を向け。心配気に見下ろしてくる士郎の視線に気づくと、サッと頬を朱色に染めた。顔を背け、急に大人しくなったジェシカを、怪我したのではないかと疑った士郎が顔を近づけていく。
「? どこかぶつけたか」
「だっ、大丈夫よシロウ。け、怪我してないから。そ、それよりも早く離してくれな――」
「ナニヤッテンノ?」
目の前にある士郎の胸に手を置き、顔を俯かせながらジェシカが身体を離すよう士郎に要求しようとしたが、それを横から小さく平淡な声が遮った。
ビクリと肩を一瞬震わせると、二人は同時に声が聞こえてきた方向に顔を向ける。
「る、ルイズ」
二人の視線の先には、ワインの瓶を両手に持ち、にこやかに笑うルイズが立っていた
「随分と楽しそうな事してるわねシロウ。わたしが脂ぎったオヤジの相手をしてる間。シロウは脂の詰まった女とよろしくやってたってわけね……」
「る、ルイズ誤か――」
「うっさいバカッ!!」
「グハッ!!」
慌てた様子でルイズに向かって手を伸ばした士郎に向かって、両手に持ったワインの瓶を投げつける。ブンブンと回転しながら向かってきた瓶は、顔面と鳩尾にめり込み。肺の空気を強制的に排出させた。
腹に手を当て床に膝をついた士郎に向かって駆け寄ったルイズが、横腹にヤクザキックをかます。
「あんたはそこで寝てなさいっ!!」
床に転がった士郎を怒鳴りつけたルイズは、肩を怒らせ客席に歩いていく。
去って行くルイズの後ろ姿を目を丸くして見送ったジェシカは
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