第五章 トリスタニアの休日
第二話 最高の調味料
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そこは狭い部屋だった。
背の高い者ならば、頭を下げなければぶつけてしまう高さにある天井。
どう見ても人が寝泊りする場所であるとは思えない、壊れたタンスやガラス瓶が入った木箱等のガラクタの山。
人が一人ギリギリ寝れる程度の粗末なベッド。
狭い部屋……そこは『魅惑の妖精』亭の屋根裏部屋であった。
泊まるところがないということから、スカロンが貸出してくれた部屋がそれであった。当初は埃まみれだったり、半壊状態の家具が所狭しと積まれていたり等、物置として使われていた屋根裏部屋であったが、執事スキルを全開にした士郎が二、三〇分程度でリフォーム張りの掃除したことから、一目見ただけでは元は物置に使っていた部屋には見えなくなっている。
そんな元物置の屋根裏部屋で、士郎が樽の上に座り、目の前で正座しているルイズに向かって説教をしていた。
「さて、ルイズ。何か言うことはあるか?」
「……明日も仕事あるし、さっさと寝ましょ」
「待てルイズ」
「きゃんっ」
踵を返しベッドに潜り込もうとするルイズの首根っこを掴み、士郎は自分の下に引き寄せる。最初は暴れていたルイズだったが、士郎の膝の上に乗せられると、借りてきた猫の様に大人しくなった。
「いくら望んでやってる仕事ではないとは言え、客を殴るのは流石にやり過ぎだ」
「……」
「いいかルイズ。俺達の目的は情報収集だ。そして酒場は情報が集まる場所であり、酒を飲むことによって口も軽くなる。つまりは情報収集にはうってつけの場所なんだぞ」
「……」
「なのにお前は直ぐに手を出して。もう少し方法を考えろ、方法を」
「……くぅ」
「……ルイズ?」
膝の上に乗せたルイズに説教を始めた士郎だが、全く返事をしないルイズに疑問を覚え。俯いている
ルイズの顔を除き込むと。
「……おい」
「……むにゃむにゃ」
「……寝るなよ」
士郎の胸に寄りかかったルイズは、いつの間にか目を閉じ船を漕いでいた。起こして説教の続きをしようとした士郎だが、慣れない給仕の仕事や任務のことで疲れているだろうと考え直し。軽く溜め息を一つつくと、ルイズの腰と膝の下に両手を回し、ゆっくりと持ち上げた。
端に設置されたベッドにそっとルイズの身体を下ろすと、自身は床に腰を落とし、ベッドに寄りかかり、月明かりに照らされる街が除く小さな窓を見る。
「はぁ……こんなんで大丈夫なのか?」
街に明かりは少なく、空に輝く月や星がよく見えるが……曇ったガラス越しにはその光も曇って見えた。それはまるで、今後の先行きを表しているようで……。
情報収集……無理かもしれないな……
士郎の予感は、残念なことに外れることはなかった。予感が確信に変わったのは翌日の夜の
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