暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 17
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員、建物の正面左側に集まってるのか。
 窓から漏れ出る物音と明かりの量が極端に片寄っていた。
 と、すれば。

(右側のどこかから侵入するのが得策か)

 オレの手持ちは、包丁が一本。
 わざわざ大勢が集まってる中に突っ込んでいって不利な状況を作っても、意味がない。

 獲物を捕らえる時は静かに。けれど確実に。

 屋内から姿を見られないよう、外壁に背中を貼り付け。
 窓の周辺は巧みに避けながら、静かに素早く移動する。
 と。

(…………?)

 何故か、一階の正面右隅の二つだけ、窓が開いてる。

(間隔からして、同じ部屋の窓だな。灯りは漏れてないし……一室だけ閉め忘れたのか?)

 念の為に二階の窓も確認してみるが。
 目に見える限り、開いているのはここだけだ。

(……なんなんだ?)

 ずさんな警備に、閉じ忘れた窓。
 これはさすがに不自然じゃないか?
 だって、中央教会の権力者第二位が来てるんだぞ?
 他の、何でもない日の神父達ならともかく、よりによって世界規模の祭日当日の、国政の中枢にも関わる重要人物の護衛が、こんな穴だらけの状況を看過するものか?

(本当に、入って来いと言わんばかりの……)

 ……………………『罠』?

 いや、違う! そんな筈はない!
 オレが孤児院に奇襲を掛けると決めたのは、連中が中央教会を発つ直前。
 オレも、すぐにあの場を離れたんだし、連中が計画に勘付く要素なんて、どこにもなかった!

(落ち着け。落ち着くんだ、オレ。あいつらは、オレがここに居ることも、オレがこれから何をしようとしてるのかも知らない。知りようがない!)

 仮に、これが本当に、不審者を引っ掛ける為の罠だとしても。
 連中が想定してる『不審者』は『オレ』じゃあない。
 『オレ』であるわけが、ない。

「……ふぅー……」

 額に噴き出してきた嫌な汗を腕で拭い。
 激しく暴れる心臓を、深呼吸で無理矢理なだめすかす。

 そうだ。連中が想定しているであろう不審者は、オレじゃない。
 でも。

(……正体不明の不審者が現れること自体は、想定してる可能性が高い!)

 全身から血の気が引く。
 頭が冷え、指先が凍り付き、震える顎が奥歯をカチカチ鳴らす。

(どうする……? どうするべきだ??)

 これが正体不明の侵入者を想定した罠なら、連中が『オレ』を知ってるかどうかの懸念はまったくの無意味だ。
 侵入者が何者でも、あいつらはただ、罠に掛かった獲物を捕まえるなり、殺すなりするだけだし。
 どんな策謀にでも対応できる自信があるからこその、手抜きに見えるこの配置……だとしたら。

 もしかしたら、孤児院の外。
 畑のどこかで、連中の仲
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