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徒然草
84部分:八十四.法顕三蔵の

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八十四.法顕三蔵の

八十四.法顕三蔵の
 唐代初期の高名なあの玄奘法師がようやく印度に辿り着いた時のことでありますがその地において唐の国の扇子を見てはそれだけで故郷である唐を懐かしむ気持ちになり秒息になり寝込んだその時は唐の料理を食べたいと言ったそうです。この話を聞いてあれだけの偉人だというのに異国では甘えたことを言っていたのだな、と誰かが漏らしたのを聞いたことがあります。ですがそれを聞いた弘融僧都がそれはまた玄奘法師にもまた心優しく茶目っ気があるものですな、と言っていたのは僧侶らしくなくかえって人間として広がりがあるように思えたものです。
 考えてみれば人間ならば故郷を懐かしんで当然のことです。例えそれが非常に高名で徳のある方であってもです。ましてや印度といえば唐から見てもどれだけ遠いものか。ようやく辿り着いたとしてもそれでも故郷を懐かしんで当然です。それがわかっていないというのはやはり人間としての広がりをあまり感じません。むしろそうしたことを知ってそのうえで相手の人間性を感じるという方が広がりを感じます。聞いていてそういうことを感じたこのお話です。私としましては弘融僧都の御言葉に深く感じ入るものであります。それがいいか悪いかというとそれは人それぞれであるでしょうが。


法顕三蔵の   完


                  2009・8・6

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