悪意の牙、最悪の謀 (前)
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
防ぐなど以ての他だ。オルタの剣撃を防ぐ為に両手で巨槍を防ぐのに塞がっていた。
「ォ、」
一瞬の判断。
「ォォオオオオ――ッッッ!」
無理矢理に体を捻り、心臓に突き立たんとしていた魔槍を躱した。代償にオルタの黒剣が自らの胴を袈裟に切り裂くのに、彼女に拳を叩き込んで吹き飛ばす。オルタは黒剣の腹で拳を受け、損害なく身軽に着地する。魔槍が担い手の許へ帰還する中、そこへ殺到するのは剣弾の雨。
剣の丘に縫い付ける爆撃がアルケイデスを封じ込める。クー・フーリンは確信した。今だと。しかしオルタはハッとした。爆発に呑まれたアルケイデスの眼が不気味に光っている。直感した。
「待て! ラン――」
「出な、『圧し潰す死獣の褥』!」
顕現する光の御子の城。四方を囲み、城内の味方や己の幸運と宝具、魔力以外のステータスを増強させるそれ。固有結界の中に築かれた城塞は、内部の影響を結界に与えずに屹立する。聳え立つ城壁の威容は現代にまで現存する城、その古代のものであり、クー・フーリンの本拠地として機能した。
黒剣により深傷を負ったアルケイデスが立ち上がる。巨槍が発する燐光が辺りに撒かれ、防壁となり剣弾を遮断したのだ。
オルタやクー・フーリン、士郎を大幅に強化した城に、彼は笑っていた。
固有結界を奪う、容易いが己には意味がない。無限の剣を発現するのは弓兵の異能、心象風景を顕すそれは、アルケイデスの心象風景を顕すだけでなんら価値がない。しかも術者は人間であり、これは魔術だ。宝具ではない。故に奪おうにも抵抗され、ほぼ効果がない可能性もある。
しかしかといって騎士王の聖剣を奪う、これは容易くなかった。そして光の御子の魔槍を奪う、これは相手の力量ゆえに不可能。
だがこれはどうだ? 己に重圧を与え、敵に加護を与えているこの宝具は。
「待ちに待ったぞ」
この宝具があるのは知らなかった。だがしかし虎視眈々と機会を窺い続けた甲斐はあった。
己の刑場となっている城の宝具。己にも重圧を掛けるそれは、間接的に己に触れているのと同義だった。
アルケイデスは虚空に腕を伸ばす。彼の負った傷は秒毎に治癒していく。無尽蔵の魔力が己にはあった。今、彼は秘め続けた宝具を開帳する。その真名は、
「『天つ風の簒奪者』」
宝具を簒奪する宝具である。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ