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徒然草
72部分:七十二.賤しげなる物

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七十二.賤しげなる物

七十二.賤しげなる物
 賤しい、つまり下品に見えてしまうものとして座っているその周りに道具があれやこれやと沢山転がっていること。硯の上やその脇に筆が沢山並べられていること。礼拝堂に仏像が多いこと。庭でそこに置かれている石や草花が騒々しく配されていること。家の中で子供や孫がうようよと一杯いること。人に対してお喋りなこと。自分の自慢を沢山書いた紙と引き換えに神仏に祈願すること。
 それに対しておよそ多くても見苦しくないものはしっかりとした本棚に書物が多く入れられていること。それとゴミ箱のゴミです。
 どうも何かが多くあればそれだけ下品に感じてしまいます。何か騒々しくて見ていて品がないのです。それに対して何もないすっきりとした様子ですとさっぱりとして見ていて気分も落ち着きます。何が大事なのかといいますとやはり整理整頓です。ささやかなことですがこれをするだけで上品に見えますし落ち着くものです。それに対して整理整頓ができていないならばそれだけで品がなく見えてしまいます。ですから何事に関しましても整理整頓をするべきです。まずはそれからです。ゴミ箱のゴミは下品に見えません。むしろそれがあると成程、掃除をしているのだと思います。掃除をするとそれだけでもう何もかも、雑多なものがなくなってしまってすっきりとします。見ているこちらも気分が落ち着いて非常に穏やかにもなれます。気品というものも毎日しているうちにあちこちから感じられるようにもなってくるものです。思えば下品なものにならないようにするにはこうした些細なことからしていくべきなのです。何事も些細なことからです。


賤しげなる物   完


                 2009・6・27

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