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KANON 終わらない悪夢
139未来予知
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非お願いします。できましたら、もうお一方のお力も」
 女如きに当主候補になられるのが嫌だった男は、栞と香里の力をどうしても見たがった。
「ええい、くじを持って来いっ」
 給仕をしていた女が、近くに置かれていた穴の開いた箱を差し出し、栞に一枚取るよう促されると、中から半紙を一枚取り出して開いた。
「おいっ、誰だこれを書いた馬鹿者はっ、「火鼠の革衣」だとっ? かぐや姫ではないかっ! こんなものが出せるかっ」
 当主が奪ってくしゃくしゃにして叩き付けた紙が、末席まで転がって行ったが、次の瞬間、それは栞の手の中に戻った。
「余興ですので、お出ししますよ」
 次の紙を出そうとした当主の手が止まり、栞の方を見た。
 男共も消えた紙が栞の手の中にあるのを見て驚いたが、何かの手品だろうと信じなかった。
「出せるのか?」
「何が出るかは保証できませんが、消えない炎で燃えている皮なら、家まで焼けてしまいますね」
 凍るような笑顔で笑ってやると、当主の方が青い顔をして、庭を指差した。
「では、中庭で出せ」
 指示された栞は縁側に立ち、ポケットに手を入れて目を瞑った。
「ありました」
 手袋で触れても燃えていない品物なので、そのまま引き出すと、自分でもどうやってポケットから出したのか分からないほど大きな物が出た。
「何だ、それは?」
 小さなポケットから煙を吹いている異様な物が出て、場が一瞬静まり返ったが、栞はこう言った。
「耐火服とヘルメットです」
「はっ、はははっ」
 笑い出した当主に釣られ、男共も一斉に笑い出した。
「ははっ、革衣ならぬ耐火服かっ、これは一本取られた、がはははっ!」
 座が盛り上がった所で栞は広間に戻り、先程話した当主候補の男に、まだ熱く煙が出ている耐火服を渡した。
「でも、火災現場で耐火服を無くすなんて、気の毒な人がいたものです」
 栞の悪魔のような笑顔に場がすっと鎮まり、男がヘルメットを見ると、息子の名前と血液型が記入されていた。
「む、息子に何をしたああっ!」
 立ち上がって栞に掴みかかろうとした男は、そこから消えると広間の真ん中に現れ、逆方向に走りながら上下と方向の感覚を失い、転倒して頭を打った。
「新人の息子さんは、ポンプ車勤務ですよ、そんな事も知らないんですか?」
 静まり返った室内を歩き、自分の席に戻って座る栞。
 両親も香里も、家族が得体の知れない化物に変化してしまったのに気付いた。

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