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徒然草
70部分:七十.元応の

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七十.元応の

七十.元応の
 元応の後醍醐帝の頃のことですが平安京の清暑堂の演楽の場において演奏の会が開かれたのは宮中において秘蔵されていた玄上が盗まれてしまった頃でありましたが琵琶の盟主であった菊亭藤原兼季が琵琶の中でも名器とされている牧馬を弾くこととなりました。それで席に座ってそのうえで手探りで演奏の前の調整を行っていましたところ琵琶の支柱を一本落としてしまいました。藤原殿はその時に懐に米を練って作った糊を忍ばせていましたのでそれを使って修理をしました。演奏の場の準備が全て整ってお供え物が飾り終えられる頃にはよく乾いていまして演奏には差し支えがありませんでした。
 そしてここで気になることですが何か誰か恨んでいたのでしょうか。音楽を聴く者達の中から覆面をした女が出て来てその支柱を取り外して元通りにしておいたそうです。この女の素性はわかりません。こうした場に参列して楽を聴いていたからには名のある人だとは思うのでありますが。果たして誰であったのかはわかりません。
 話としましては藤原卿の抜かりのないものを伝えていいお話だと思いますがそれでもこの覆面の女が何者だったのかが気になって仕方がありません。一体全体何処の誰であったのか。そして何を考えていたのかは今もなおわかりません。しかしそこにあるものは思っているよりもずっとその根が深いものなのではないのか、そうも思ったりもしてしまいます。それが何なのかもよくわかりませんが。しかし最後に実におかしなことが起こってしまったものだとつくづく思わざるを得ません。


元応の   完


                  2009・6・25   

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