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徒然草
46部分:四十六.柳原の辺に

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四十六.柳原の辺に

四十六.柳原の辺に
 柳原のところに強盗法印と自ら号しているお坊様がおられました。度々強盗に逢っているのでそれでこうした名前を自分からつけられたそうです。
 このお話を聞いて思ったことはこれはまた随分と達観しておられるものだということです。普通こんなことはないといいますかそれにしても肝があるというか。普通はこうした号し方はありません。まず考えられないことであります。強盗に逢うということはそれそのものがもう充分過ぎる程不幸なものであります。けれどそれでもあえてこうした号を自分からつける。やはりそうはないことです。考えれば考える程こんなことはありません。よく僧侶でありながら怒り狂うことが非常に多い方がおられますがこうした方もおられるのだということも知りそれもまた非常に考えさせられることであります。考えれば考える程そこにあるものに対する深さを知ることになります。そうしてそのうえでまた感じ入るのです。この感じ入るものを自分で確かめながら思いに耽る。思いに耽ればそれがまた心に染み入ってきます。本当にこうした方がおられるということがこれまた非常に心に入るものです。考えればさらに深くかつとてもよいお話であると思います。だからこそここに今書き留めておくことにいたします。


柳原の辺に   完


                  2009・6・1

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