33部分:三十三.今の内裏
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三十三.今の内裏
三十三.今の内裏
二乗の富小路の豪邸が増築される時のことですがこの増築のことに詳しい人に見せてもらったところ全く問題ないと言いました。そしてそろそろ帝のお引越しが間近になってきていた頃に伏見帝のお母上がその建てられたものを御覧になられて平安時代の豪邸の仕切板にあった覗き穴は真ん中で縁取りもなかったと仰ったことには恐れ入りました。
新しい建物を建てる際の覗き穴は下弦の半月型でありまして木の縁がついておりまして欠陥住宅ということになってやり直しになりました。
こうしたことを考えていきますと家を建てる際の覗き穴一つ取ってもそこには考えるべきもの、思うべきことが多々あります。些細なことでもそうであります。そして考えをさらに巡らせていきますとそこから実に多くのものが見えたり聞いたりするかも知れません。覗き穴一つ取っても、家を建てるにあたっても、色々と風情があるものです。帝のお母上ともなられるとそれはよくわかっておられます。そうしたことを見聞きして恐れ入り頭の中に留めておくと。それがまた多くのものを生み出す次第となるのでしょう。その覗き穴の形とそこに何かあるかでさえ何かを大きく変えてしまいます。まことに細かいことですがそれこそが風情なのだと思います。
今の内裏 完
2009・5・19
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