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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
流氷の微睡み3
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ついても頂点の天孫家が一度も途絶えることなく存続しているというのは極めて異例であり、またラバルナ帝国と敵対することなかったために日本人というメンタリティを一度も害されたことがない。
 故に、外国人が日本人のコミュニティを訪れれば歓迎するが、コミュニティに入ることは嫌う。超国家でないが故に異国を受け入れる土壌がないのだ。

 パートナーであるルーシャの扱いはもっとひどい。「リックが製鉄師だからおまけでついてきた」という認識しかされておらず、嫌われる嫌われない以前に対等な存在だと思われていない節がある。彼女自身は強かであるのでその立場を利用しているが、同じ外国人教諭である彼女に対してだけヘラヘラするというのは、ジェンダーと魔女の二重差別に他ならない。リユニオン(北アメリカ大陸を中心とする新興超国家)なら訴訟まっしぐらだ。

 しかし、思う所はあれどリックは今のこの職場を嫌ってはいない。なので若干不機嫌程度で済んでいるし、そもそも自分がここからいなくなれば困るのは自分たち以外だ。国に尽くしている振鉄階位から首輪を外すことの意味ぐらい連中も多少は心当たりがあるらしい。

「ところでリック」
「なんだ」

 隣を歩いていたルーシャがこちらを見上げる。

「私たちの口座から電子決済で400万円くらい引かれてるんだけど。防犯グッズ購入費として、ちょうど事件が起きた当日の時間帯に」
「……あの時間に火事場泥棒する余裕があり、自衛手段に乏しく、なおかつ俺たちの口座番号を盗み取って決済に使えるほど情報処理能力に優れた、恐らくは製鉄師。」
「……犯人見つけたりだね。共犯は魔女かな?」
「どうかな。言い出しっぺに聞けば分かる」

 数分後。金の出どころを突き詰めたリックの手によって悟の脳天に拳が振り下ろされた。

「人命と事件の早期解決を優先したまでだ。使えるものを使って何が悪い?」
「だからといって黙って抜くな。犯罪行為だぞ。パクったものは後でこっそり報告すれば俺のポケットマネーじゃなくても学校の予算から金を引っ張れるんだ」
「文句の理由はそっちかよッ!?」

 なお、内訳によると強化外筋スーツが300万円と最も高かったという。
 
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