216部分:二百十六.最明寺入道
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二百十六.最明寺入道
二百十六.最明寺入道
最明寺入道殿であられる北条時頼殿が鶴岡八幡宮に参拝した後で足利義氏殿のところにこれから伺いますと使いを出したうえで立ち寄りました。その主の義氏殿が用意したものはお銚子一本目に鮑、二本目に海老、三本目に蕎麦がきでありました。この宴席には主人夫婦のほかに隆井僧正殿も一緒に出席して座っていました。宴もたけなわになりますと時頼殿は毎年もらう足利の染物が待ち遠しくて仕方がないと言いました。それを聞いた義氏殿はその言葉を聞くとそれはもう用意してありますと百花繚乱に染め上がった三十巻の反物を広げてその場で女官にシャツに仕立てさせてその後で送り届けたそうであります。それを見ていた人が最近まで生きておりましてその話をしてくれました。
これは義氏殿の用意のよさに感服しました。流石だと思います。こうして人が所望する前に備えをしておく、これは中々できるものではありません。しかしそれができるかどうかで人がわかってくるものであります。それを百花繚乱に染め上げて三十巻も用意しておくというのはできるものではありません。そしてそれだけではなく義氏殿の宴の献立は武士のものらしいです。また時頼殿もそれに不満は言っていないようです。質実剛健でこれまた実にいいものであります。
最明寺入道 完
2009・12・16
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