第一話 クロスボーンガンダム
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コンソールパネルに表示されていた数字の羅列を組み合わせ、ロックの解除を終えると扉が開いていく。この先に、このブラックロー運送会社の社長が━━━━━━━━━。
そこは、社長室では無かった。
いや、もしかしたら…ここは、このブラックロー運送会社の社長室なのかも知れない。
勝手な思い込み、憶測、想像だが、社長室と言えば高そうな装飾の施された一室で…なんと言えばいいのか解らないが、自分の想像とは掛け離れた光景に言葉を失ったのは事実だ。
「ここって、」
モビルスーツの格納庫?
「変わってるでしょ」
「変わってるって言うか…ここって、モビルスーツの格納庫…ですよね?」
「そうだよ」
即答だった。
「じゃ、じゃあ、もしかしてここの社長室ってモビルスーツの格納庫と同室なんですか?」
まさか、そんな訳ないよね?
「その通り、That’s Right」
「マジですか?」
「マジのマジ、ここがブラックロー運送の第四ステーション『カナリア』の社長室」
広々とした空間に、物資の搬入手続きや送られてきた物資の確認等に勤しむ職員達。
そして、その奥には数機のモビルスーツが待ち構えていた。
「ほら、あそこに居るのが社長だよ」
視線の先、そこ居るのは━━━━━━━━━━━━━━━。
「あの人は、」
俺の面接を担当してくれた、名前はオンモ…さんだっか?
「おぉ、来たねぇ!」
俺とリリアさんの視線に気付いたオンモさん?はこちらへやって来る。
「社長、頼まれてた資料です。それと、」
資料を差し出し、オンモさんは「ありがと」と言って受け取る。そして、
「天音 光汰君、久しぶりだねぇ」
まるで久しぶり会った親戚のおばあちゃんのような発言だった。
いや、発言もそうだが雰囲気が正にそれだ。
「お、お久しぶりです…」
そう。あれは、一年前の出来事。
唐突だが、この人に会って一年前の事を思い出していた。
このブラックロー運送会社の地球支部で面接を受ける前日、俺は母さんに絶縁された。
そうなる事は解っていた。覚悟もしていた。
でも、現実は残酷で実際に母さんの口から放たれた言葉に、俺は涙を流した。
地球生まれの地球育ち、母さんが極度の宇宙嫌いで生まれてから十九歳になるまで宇宙に行ったことが無かった。
周りの皆は、学校の行事とか親戚に会いに宇宙に行っているのに俺だけ宇宙に行ったことがない…。それが嫌で嫌で仕方なかった。
だが、母さんの事を考えると…踏み止ってしまう。
悩んで苦悩した母さんの事を考えて、それを繰り返して俺は結論を出した。
そして月日は流れ、俺は決断した。
その決意は固く、簡単には揺るがない。
揺るがない。
…揺るがない。
……揺るがない。
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